シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある


久瀬消防署・指令室

午後2時40分。

久瀬消防署の指令室には、激しい雷雨に関する情報が次々と集まっていた。
雷が絶え間なく落ち、複数の地点で停電や通信障害の報告も届いていた。

「雷の接近範囲、依然拡大中。現時点で現場出動は危険と判断、各隊待機とします」

副署長・天野怜治が的確に指示を出す。

出動準備を終えた朝比奈たちも、無線を握ったまま、出動のタイミングを図っていた。

「現場に出ても、雷の直撃を受けたら意味がない……今は動けないか」

室内には張り詰めた空気が流れていた。

そのとき――

「入電! ○○町三丁目、木造住宅に落雷による火災発生! 煙確認済み!」

緊急性の高い通報が飛び込む。

「初期対応可能な部隊、すぐに出動!二次災害に気をつけろ!」

「久瀬救急1 現場へ向かいます!」

朝比奈が一歩前へ出て、ヘルメットをかぶる。

池野、檜山もすぐに装備を整え、隊車へと走る。

――激しい雷鳴の中、それでも動き出す。

彼らの出動が意味するのは、
“ただ火を消すためではない”。
避難が遅れる市民たちを守るためでもある。

「落雷の火災……次は、どこに落ちるかわからない」

車内で、朝比奈は静かに言った。

その横顔に浮かぶのは、冷静な決意。
そして――心の奥にある、舞香の姿。

(どうか、無事でいてくれ)

彼の祈りが、雨音に紛れて、静かに響いていた。