シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

灯りを落とした寝室。

カーテンの向こうから微かに漏れる街灯の光が、
ふたりの輪郭をやさしく縁取っていた。

ベッドのなか、舞香は海斗の胸に顔を寄せたまま、目を閉じていた。
けれど、眠れない――というより、さっきのやりとりが胸の奥でくすぶっていた。

「……海斗、起きてる?」

「ん、起きてる」

彼の返事は低く、くぐもった声。
でも、指先はもう舞香の背中をゆっくりと撫でていた。

「さっきの、……焦らしたでしょ」

「んー、ちょっとだけな。俺なりの仕返し」

「……やっぱり、ずるい」

「でも、ちゃんと我慢した。えらいって言って?」

「……えらい」

素直に答えると、海斗の胸がくすくすと揺れた。

「……なんか、むかつく……」

ふくれた声に、海斗はそっと顔を覗き込んできた。

「じゃあ、今夜は、“ただくっついて寝るだけ”。それで仲直りしよう」

「ほんとに……寝るだけ?」

「……たぶん。……いや、ちょっとは“とろけさせたくなる”かもしれないけど」

「……それ、寝れないってことじゃん……」

お互いに目を合わせて、ふっと笑い合う。

海斗の手が、そっと舞香の髪を梳くように撫でる。

「でもな、こうしてるだけでも、十分幸せなんだよ」

「……わたしも、そう思ってる」

心音と、息遣いと、ぬくもりと。

言葉じゃ伝えきれないものが、肌の感覚として交わされる夜。

舞香は目を閉じて、
そのすべてを受け取るように、海斗の腕の中に包まれた。

――きっと、明日も同じように、
彼と一緒に笑っていられる。そんな気がしていた。