シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「……ねぇ、舞香」

「……なに?」

カレーを食べ終え、ソファに並んでいたふたり。
舞香がうとうととまどろむように肩を預けていたところ、
海斗の声がすぐ耳もとでささやかれた。

「まだ、ちゃんと“許してくれた”って、聞いてない」

「……もう、さっき言ったじゃん……」

「ちゃんと、言葉で。――俺の目を見て」

そう言って、彼の指先がそっと舞香の耳に触れる。

「ひゃ……っ」

びくりと体を震わせた舞香を、海斗は片腕で引き寄せたまま、
唇をすぐ近くに寄せていく。

「……ふうん、今日もやっぱり、ここは変わらず、弱いんだな」

「……やだ、そういう言い方……」

「じゃあ、許して。そうしたら、ここに優しくするのもやめる」

「……ずるい……」

海斗の声は低くて、耳に溶け込むように甘い。
そのまま彼は、唇をそっと舞香の耳たぶに落とす。

キスというより、空気の震えを伝えるような、
ごく淡い、でも確かに意識を攫っていく熱。

「……っ」

舞香は、ゆっくりと目を閉じた。

「だめ……そこ、されると……」

「どうなるの?」

「……わかんない。……でも、心臓、どくどくして、変になる……」

「じゃあ、もう少しだけ、意地悪」

海斗の指が、やさしく耳の裏をなぞる。

そのくすぐったさと、心の奥を撫でるような感触に、
舞香の呼吸が少しずつ早くなる。

でも――それ以上のことは何も起きない。

焦らすように、ふわりと撫でたあと、
海斗はすっと身体を引いて、彼女の頭をぽん、と撫でた。

「……また今度な。今日は“我慢”してやる」

「……ひどい……」

唇を尖らせる舞香に、海斗はいたずらっぽく笑った。

けれど、その目の奥には、
ちゃんと“好き”が宿っていた。