シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

関係者ゾーンの一角。
柱の陰に立つ朝比奈の元に、舞香がそっと戻ってくる。

「……海斗、さっきの写真のこと……ちょっとだけ、記念でね」

「“脚長い”とか“肩幅すごい”とか、聞こえてたぞ」

拗ねた声でぽつりと呟く朝比奈の横顔には、明らかに不機嫌な影が差していた。

「え……そこまで……」

舞香がバツの悪そうに笑うと、背後から微かに笑い声が聞こえる。
池野が苦笑を堪え、檜山は手で口元を覆っている。
香奈衣はコーヒー片手に「それ以上はやめなさい」と目で訴えていた。

「ちょっと、みんな見てるよ……!」

舞香が慌てて朝比奈の袖を引っ張る。
それでも彼は舞香を背中に隠すようにして一歩近づくと――

「じゃあさ、罰な」

と囁いた瞬間、彼の指がそっと舞香の耳たぶをなぞった。

「っ……!」

小さく肩が震え、舞香はその場に立ち尽くす。

「……耳、弱いの知ってて、ずるい……」

「拗ねたお返し。これくらい、仕返しにはならない?」

そう言って、朝比奈は耳元に唇を寄せ、微かに吐息を含んだ声で囁いた。

「……そんなに他の男の前で笑ってたら、俺も、意地悪したくなるだろ?」

「か、海斗……やめて……今は……」

「……みんなには見えない角度だしな。これくらい、セーフ」

それでも、舞香の頬は真っ赤に染まり、声も震えていた。

一方その様子を遠巻きに見ていた香奈衣は、冷静に囁く。

「……あれ、完全にアウトだよね」

「耳……だいぶ赤かったですね」

「久瀬署の“プリンスレスキュー”、やっぱり手が早ぇなぁ……」

檜山と池野がヒソヒソと話す中、
舞香は「帰ったら覚えてろ……」と小声で睨み返すように見上げていた。

それを受けて、朝比奈はひと言。

「はいはい。あとで“お仕置き”な」

彼の目は、完全に上機嫌だった。