シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

──幕張メッセ・中央ホール。
観覧者も多く集まる中、競技大会の表彰式が始まっていた。

壇上に呼ばれたのは、各ブースで目覚ましい活動を見せた上位3チーム。

司会者の口から、ゆっくりと順位が発表される。

「準優勝は――東京都 久瀬消防署チーム!」

観覧席から拍手と歓声が上がる中、
朝比奈、池野、檜山の3人が壇上に立ち、賞状と記念品を受け取った。

背筋を伸ばした朝比奈の横で、池野は一礼しながらも目元を赤くしていた。

そして──
檜山は、そのまま式が終わるのを待たずに、控室へ引き上げるなり、池野の胸に顔を押し付けていた。

「……っくそっ……ちくしょう……あと、あとちょっとだったのに……!」

「檜山……でも、本当によく頑張りました」

池野がぽんぽんと優しく背中を叩く。

その様子を見ていた朝比奈は、手に持った賞状をそっと下げ、ふっと小さく笑った。

「お前、ほんとに悔しがると子供みたいになるよな……」

「……だって、だって、絶対優勝したかったんだもん……!」


その後、優勝チームの講評が壇上で発表された。

「優勝は、神奈川県海老原消防局。
 判断の的確さ、特定行為における医師とのコミュニケーションの明瞭さ、
 そして搬送中の急変対応まで想定した流れが非常に優れていました。
 特に“輸液中のCPA”に対して、緊張性気胸の可能性を疑い、胸部観察から除外判断を行った点が秀逸でした」

それを聞いた朝比奈は小さく頷きながら、すぐにメモ帳を開いて講評を記録する。

「……なるほど。やっぱりあそこ、確認不足だったな」

ふたりの後輩も、朝比奈に倣って真剣な顔で聞き入っていた。


その頃――
会場の一角では、すっかり緊張が解けた香奈衣と舞香が、明るい雰囲気の中にいた。

他の地域から来ていたレスキュー隊の精悍な若手隊員たちと、にこやかに並んで写真を撮っている。

「うわっ、あの人、脚長っ……! ていうか肩幅すごい……!」

「ね、ね、あの笑顔やばくない? ちょっと一枚一緒に撮ってもらお!」

スマホを構えて盛り上がるふたり。

──それを、遠巻きに見ていた朝比奈。

表情は穏やか……に見えていたが、目元はやや鋭く、口元には薄い線。

「……写真、撮ってもらってんのか。あんなに楽しそうに」

呟きに、横を歩いていた池野が気づく。

「……あっ、朝比奈さん、舞香さんたち……あれ、嫉妬ですか?」

「べつに」

即答。

だが明らかに不機嫌なのは隠しきれていない。

「こっちは表彰の疲れが抜けてないってのに、あっちはあっちで……はぁ……」

「朝比奈さん……顔、ちょっと怖いです……」

そんな朝比奈を背に、舞香がレスキュー隊員たちにお礼を言いながら、小さく手を振っていた。

その笑顔は、誰よりも柔らかく、そして――
朝比奈のためのものだったのに