シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

競技終了後、ブース前に待機していた審査員がメモを手に近づいてくる。

審査員(医師役)
「お疲れさまでした、久瀬消防署チーム。まず結論から言いますと、全体として非常に優れた対応でした。とくに朝比奈隊員、手袋への記録や、患者との会話による心理的安定――非常に“人を診る”姿勢が出ていました」

朝比奈が小さく一礼する。

審査員
「池野隊員の静脈路確保も適切でした。穿刺前の声掛け、穿刺後の確認、報告まで流れに無駄がなかった。
檜山隊員も搬出時の導線確認が早く、初動の動線確保に貢献していました」

審査員
「ただ、強いて言うなら――CPA時の心拍再開報告直後、波形報告がやや遅れ気味でした。
また、心肺停止時の正確な記録保持は重要です。今回のように記憶頼りにならぬよう、交代時の口頭確認や計測者の明示があるとより良いですね」

3人はそれぞれ神妙な顔で頷いた。

審査員
「それを踏まえても、今回の内容は高水準です。患者への丁寧な言葉がけ、技術の正確性、連携の的確さ、すべてにおいて実戦的。
審査員一同、安心して見守ることができました。お疲れさまでした」

――拍手が静かに、しかし確実に広がっていった。

久瀬消防署の3人は互いに視線を交わし、深くうなずく。

(この訓練の意味を、誰よりも知っているから――)