シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

海斗のキスは、ひどく優しくて、甘かった。
触れるたびに、舞香の心と体はほぐれていき――
目の奥が潤むのが、自分でもわかるほどだった。

(……また、こうやって、私ばっかり)

自然と伸びた手が、彼の胸元にすがりつくように置かれたその瞬間――

「……ここまで」

海斗が唐突に顔を離した。

「え……?」

ぽつんと取り残されたような温度に、
舞香の声が不意に掠れる。

「今日はこれでおしまい。
“仕返し”にならないと意味ないからね」

「……え?」

「……今夜は、君が“してほしくてたまらなくなるくらい”じゃないと、ダメ」

いたずらっぽく笑いながら、
海斗はソファの背にもたれ、わざと目を逸らす。

(……まさか)

「か、海斗さん……」

「ん?」

「やめちゃうの、ほんとに……?」

「うん」

即答。

舞香は、ひとつ息をのんだあと、
膝立ちのまま、じっと彼を見つめた。

「……わたし、」

「……」

「……わたし、もうちょっと、甘やかされたいです……」

「……知ってるよ」

「わかってて、途中でやめたの?」

「そう。
君が“そういう顔”するの、ちょっと見てみたくて」

「……ずるい……」

舞香はぎゅっと唇を噛んだ。
頬を染めながら、でも心の奥ではどこか疼いている。

(……じゃあ、私から攻めればいいのかな)

そっと近づいて、彼の頬に指を這わせ――

「……わたしからも、仕返ししていい?」

そう囁いたその瞬間、海斗の目に火が灯った。
そして次の瞬間――ふたりの唇は、再び熱を帯びて重なった。
今度は、我慢なんてどこにもなかった。