シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

舞香が洗面台で髪を整えてリビングに戻ると、
そこにはソファにもたれて腕を組み、どこか無表情な海斗がいた。

(……あれ? ちょっと機嫌、悪い?)

「……どうかした?」

恐る恐る声をかけると、彼は一瞬だけ目を細めて――
そのまま、無言で舞香の腕を引き寄せた。

「えっ……か、海斗さん?」

「“気道確保が美しい”とか、
“回復体位が甘い”とか、
“プリンス・レスキュー”とか――
俺、いつ君にそんなに暴露されたのか、ちょっと整理したくてさ」

「え、あの、それは、ちょっと口が……」

「そう。よく滑るみたいだから、
今夜は“口封じ”しとかないとね」

そう言った瞬間、海斗は舞香の顎をそっと持ち上げて、
何度も――まるで数日分のキスを取り戻すかのように、唇を重ねてきた。

「ん……っ、ちょ、待って……!」

「ダメ。君がばらまいた恥ずかしい話、
これで“帳消し”にする」

「そ、それって仕返し……?」

「そう。“仕返し”。」

キスの合間に囁くたび、
その低く熱を帯びた声が、舞香の耳にまとわりついて離れない。

「君のせいで、俺は“プリンス”呼ばわりだ。
だったら、それにふさわしい“特別扱い”をしてもらわないとな」

「……わたしが?」

「そう。君にしかできないこと、いろいろ……ね?」

言葉の余韻に頬が火照る。
仕返し――なのに、どうしてこんなに甘いのか。

それはきっと、
“ばらしても愛される”舞香と、
“からかわれても一途”な海斗だからこその、
ふたりだけの特別な距離感なのだった。