シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

カフェに戻った初日、舞香はカップを手に持つ指先に少し力が入っていた。
変わらぬ空間。
けれど、あの日を思い出すには十分すぎるほどの静けさがあった。

香奈衣は、何も言わずに厨房に入っていた。
けれどその無言の背中が、やさしく気を遣ってくれているのが伝わる。

「おはようございます」

常連客の笑顔が、舞香を“日常”へと引き戻す。
心配していた人たちが次々と顔を見せ、店内には温かな空気が流れ始めた。

舞香は、もうすぐ春が来るのだと感じた。

だけど――心のどこかで、
あの“声”を、また聞ける日は来るのかと、ふと思ってしまった。