シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

リビングに横たわる舞香は、さっきまでの回復体位から仰向けに戻されていた。
今度は海斗が、包帯やテーピング、三角巾を手にして隣に座る。

「じゃ、次は“負傷部位の固定”な。
たとえば、転倒して足をひねった人への応急処置……って設定でいくぞ」

「……まさか、またわたしが怪我人役?」

「当然。舞香の演技力、結構評価高いよ」
ニヤッと笑いながら、海斗は舞香の足首にそっと手を添えた。

「ここをひねったって想定。動かさないようにして、
まず冷やす、そして……固定」

冷感パックの代わりに冷やしたハンドタオルを軽く当てる。
その手つきはどこまでも丁寧で、舞香の息が少しだけ詰まる。

「次、包帯。……ちょっと持ち上げるね」

「……うん」
やさしく足を持ち上げられ、ふわりと支えられる感覚に、
舞香は少しだけ顔をそむけた。
けれど、目尻は緩みっぱなしだ。

「包帯は、圧迫しすぎず、でもズレないように。ほら、こうして……」

くるくると手際よく巻かれる包帯。
「……あれ? これ、うまく巻けてる?」

「バッチリ。俺の特訓の成果だな」
くすっと笑い、海斗は巻き終わりにテープを止める。

「固定できました。……でも不安そうな患者さんには、
“もう大丈夫ですよ”って、こうやって……」

包帯の上から手をそっと添え、もう片方の手で、舞香の額を優しくなでる。

「……安心してくださいね。あなたのそばに、ずっといますから」

「っ……」

俳優顔負けの低音ボイス。
突然の“本気モード”に、舞香の頬がぱぁっと赤く染まる。

「も、もう……それ、ずるい……!」

「患者対応は真剣に、だろ?」

いたずらっぽく笑う海斗の手が、舞香の手をそっと握る。

「じゃ、次は腕の固定にいってみようか。三角巾、出番だ」

「ええっ!? まだやるの?」

「まだまだだ。プロへの道は甘くないぞ、高島隊員」

そう言いながら、舞香の肘を優しく支える海斗。
けれどその目は、どこまでもあたたかく――
彼女の命も心も、包帯以上に優しく、しっかりと“固定”していた。