シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

訓練終了後、署内の休憩室。
まだ汗の残る制服のまま、朝比奈・池野・檜山の三人がテーブルを囲んでいた。

「ふぅ……マジで心拍再開しなかったらどうしようかと思いましたよ」
ペットボトルの水を一気にあおって、池本が苦笑する。

「俺も最初のVFで、AEDのタイミングにちょっと迷ってしまいました。
でも朝比奈さんがすぐ指示くださったから、助かりました」

「……いや、俺の方こそ反省点多い」
朝比奈はゆっくりと息を吐いた。

「天野さんにも言われたけど、“声かけ”が抜けてた。
反応があった患者相手なのに、処置ばっかりに集中してしまってたよ」

檜山が静かにうなずく。

「そうですね……僕もあのタイミングで、
もっと声をかけられたかもって、あとで思いました」

「技術だけじゃなくて、“寄り添い”も求められるって、あらためて感じましたね」
池本の声は、いつもより少しだけ真剣だった。

「でもな、お前たちはよくやってるよ」
朝比奈がふっと笑う。

「この前の火災のとき――舞香のこと、しっかり支えてくれてたろ。
俺が気づけなかったこと、ちゃんと察して声をかけてくれた。
それって、誰にでもできることじゃない。
“血の通った対応”っていうのは、普段の姿勢が出る。……ありがとな」

思わぬ言葉に、池野が少し照れたようにうつむいた。

「……そんな、大したことじゃないですよ」

檜山も苦笑いしながら、静かに返す。

「無意識だったかもしれませんけど……でも、嬉しいです。ありがとうございます」

「無意識でできるってのは、本物ってことだよ」
朝比奈は柔らかく目を細めた。

「こうやって訓練終わりに話せるの、地味にありがたいですよね」
池野が照れ隠しのように笑う。

「三人で組めてることが、ほんとに心強いって思ってます」

「……それは、俺も同じだよ」
朝比奈の声に、ふたりも深くうなずいた。

静かな休憩室。
マジックで書かれた訓練記録がまだ手袋の甲に残る中、
三人の意識も、技術も、絆も、確かに深まっていた。