シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

帰り道、舞香は香奈衣と並んで歩いていた。
冬の空は高くて、白い雲がゆっくり流れていく。

「……よかったね、会えて」

香奈衣がぽつりとつぶやく。
舞香はすぐに返事をせず、吐く息が白くなるのを眺めていた。

「なんだか、変な感じです。
名前も知らなかった人なのに、あの声だけは、ずっと残ってて……
今日また聞いたら、胸の奥が、勝手に反応して」

「ふーん」

香奈衣は、それ以上は何も言わなかった。
その沈黙が、逆にやさしく感じられた。

数歩先で信号が変わる。
舞香は、制服姿の朝比奈の後ろ姿を思い出していた。

――きっともう会うことはない。
そう思っていたのに、またすれ違った。

それならもう一度、どこかで交差することも――
あるのだろうか。

小さな風が、舞香の髪を揺らした。