「期待してる、って言ったよね?」
カフェの帰り道、人気のない路地にふたりきり。
香奈衣が何気なく言ったその言葉に、
島崎はぴたりと歩みを止めた。
「……香奈衣」
彼女の名を、まっすぐに呼ぶ声。
それだけで、胸の奥が小さく震える。
「……今、名前で呼んだ?」
「やっと呼べた。
ずっと、タイミングばっかりうかがってたけど……今日がその日だと思った」
「……島崎」
「名前も、呼んでほしい」
「……春輝」
その名を口にした瞬間、
島崎――春輝の目が、何かを決意したように変わった。
「ずっと、香奈衣に押されっぱなしだった。
でも、ずっと俺も見てた。意識してた。
だから、もうこっちが前に出る」
彼女が言葉を挟む隙もなく、
春輝が一歩踏み込んで、壁際に追い込むように立つ。
「――俺さ。香奈衣に、惹かれてる。
笑う顔も、意地張るとこも、背中で全部背負っちゃうとこも。
ずっと、触れたくて仕方なかった」
「……春輝……」
「言ったよな。“次は俺のターン”って。
じゃあ、俺のターンだ。今夜はもう、逃がさない」
そのまま、手を伸ばし、
彼女の頬を優しく包み込んで――唇を重ねた。
最初はおずおずと、けれど途中からは
何度も重ねて、ほどけるような深さになっていく。
香奈衣の身体がふっと揺れて、
気づけば彼の腕の中に収まっていた。
(この人、ずっと隠してた。
優しい顔の裏に、こんな熱を持ってたなんて)
「……香奈衣」
「……なに」
「これから、ちゃんと名前で呼ぶから。
だから――俺のことも、特別にして」
その囁きに、香奈衣は頷いた。
「最初から、そのつもりだった」
カフェの帰り道、人気のない路地にふたりきり。
香奈衣が何気なく言ったその言葉に、
島崎はぴたりと歩みを止めた。
「……香奈衣」
彼女の名を、まっすぐに呼ぶ声。
それだけで、胸の奥が小さく震える。
「……今、名前で呼んだ?」
「やっと呼べた。
ずっと、タイミングばっかりうかがってたけど……今日がその日だと思った」
「……島崎」
「名前も、呼んでほしい」
「……春輝」
その名を口にした瞬間、
島崎――春輝の目が、何かを決意したように変わった。
「ずっと、香奈衣に押されっぱなしだった。
でも、ずっと俺も見てた。意識してた。
だから、もうこっちが前に出る」
彼女が言葉を挟む隙もなく、
春輝が一歩踏み込んで、壁際に追い込むように立つ。
「――俺さ。香奈衣に、惹かれてる。
笑う顔も、意地張るとこも、背中で全部背負っちゃうとこも。
ずっと、触れたくて仕方なかった」
「……春輝……」
「言ったよな。“次は俺のターン”って。
じゃあ、俺のターンだ。今夜はもう、逃がさない」
そのまま、手を伸ばし、
彼女の頬を優しく包み込んで――唇を重ねた。
最初はおずおずと、けれど途中からは
何度も重ねて、ほどけるような深さになっていく。
香奈衣の身体がふっと揺れて、
気づけば彼の腕の中に収まっていた。
(この人、ずっと隠してた。
優しい顔の裏に、こんな熱を持ってたなんて)
「……香奈衣」
「……なに」
「これから、ちゃんと名前で呼ぶから。
だから――俺のことも、特別にして」
その囁きに、香奈衣は頷いた。
「最初から、そのつもりだった」



