シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

舞香は目を閉じたまま、
背中に感じるあたたかさに静かに息を吐く。

後ろから、ぴたりと密着するようにして眠っている海斗の腕が、
自分の腰にしっかり回されている。

(……苦しくないのかな)

ふと思いながらも、
その腕の力強さに、胸がじんわりと熱を帯びる。

そっと動こうとした瞬間、
耳元で、掠れるような低い声が落ちてきた。

「……もう少し、このまま」

「……起きてたの?」

「うん。……っていうか、
起きたら舞香がすぐそこにいるって思って、ちょっと幸せだっただけ」

彼の手が、そっと頬に触れた。

「……夜中、何回か、ほんとに夢かと思ってさ。
ちゃんと“ここ”にいるか、何度も確認しちゃった」

「ふふ……わたしも。
途中で、名前、呼ばれて……うれしかった」

そう呟くと、海斗の指先がすっと顎に触れて、
やさしく顔を向けさせられる。

「舞香――」

「……なあに」

「好き。……今朝の声も、顔も、匂いも、全部」

舞香の頬がじわりと染まる。

「……朝から、そんなに」

「だって、言わずにいられない。
まだ、足りてないんだと思う」

「昨日、あれだけ……」

「でも、“今の舞香”には、まだ触れてないから」

彼の言葉に、笑いながら顔を隠す。

でも、どこかうれしくて、
もう一度、腕の中におさまりなおした。

(目が合うだけで、
ちゃんと“愛されてる”って、わかってしまう)

そんな朝。

ふたりはまだ、ベッドの中でぬくもりを共有しながら、
“きょう”の始まりを、ゆっくり迎えていた。