シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「あの……」

舞香が言葉を探していると、朝比奈が少しだけ視線を落とした。

「この場ではあまり長く話せないかもしれませんが、
ちゃんと、お顔を見てご挨拶できてよかったです」

真面目で、丁寧で、どこか不器用な口調。
けれどその言葉のひとつひとつが、舞香の胸にあたたかく染み込んでくる。

「……私もです」

それしか言えなかったけれど、十分だった気がした。

ふと、横から香奈衣の視線を感じる。
彼女は遠巻きにこちらを見つめながら、にやりと笑って親指を立てた。

――やめてください、そういうの。

心の中でツッコミながら、舞香は目をそらす。
頬が、じんわり熱くなっていた。

そのとき、朝比奈が軽く頭を下げた。

「では、またどこかで。どうか、体を大事にしてください」

「……はい。ありがとうございます」

別れの言葉を交わして背を向けるその背中に、舞香はふと、
もう少しだけ話していたい――そんな想いが芽生えかけていることに、うまく気づけなかった。