シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

ガチャ、とドアの開く音がして、
玄関先に現れた海斗の気配は、いつもとまるで違っていた。

「……海斗さん?」

呼びかけると、次の瞬間――

その腕が、がしっと舞香の肩を引き寄せる。

「……本当は、まだ怒ってる。今もずっと、苦しくて仕方ない」

その声は、喉の奥から絞り出すようで、
感情の波に呑まれていた。

「お前があの煙の中にいたって知ったとき、
心臓が止まるかと思った。……ほんとに、二度と会えないかと思った」

そう言って、彼は舞香をきつく抱きしめた。

「……怖かった。悔しかった。守れなかった自分が、許せなかった。
それなのに、お前は笑って『大丈夫』なんて言うから、
俺の中の何かがぐちゃぐちゃになったんだよ」

熱くなった手が、背中から髪へ、
確かめるように触れていく。

「だから……今だけ、触れてないと無理だ。
ちゃんと、ここにいるって……全部で感じさせてくれ」

名前も呼ばずに、
息のかかる距離で唇を重ねてくる。

それは甘さよりも、
確かめるように、奪うように――でも、切実で真っ直ぐなキス。

舞香は驚いたまま目を見開いていたが、
次第にその腕の強さに、自分の鼓動が重なっていくのを感じた。

(この人は、ただの“怒り”でここに来たんじゃない。
私が、ここにいることを確かめるために来たんだ)

彼の手が、頬から首筋を撫でて、
また唇を重ねてくる。

苦しくなるほどの想いが、
彼のすべてから溢れていた。