シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「香奈衣さんの淹れるコーヒー、やっぱ他とちがうんだよな」

そう言いながらも、
島崎の視線はグラス越しに彼女の横顔を追っていた。

いつもより少し髪をまとめていて、
白いシャツの袖をまくるその仕草が、妙に色っぽく見えた。

(……いや、何見てんだ俺)

慌てて視線をグラスに戻したが、
目の端ではしっかりと彼女の動きを追ってしまっている。

もともと気の強い女性だとは思っていたけれど――
最近は、それだけじゃないと思うようになっていた。

誰よりも責任感が強くて、
言葉にしないぶん背負い込むタイプ。
自分より年上なのに、たまに無防備で、
だからこそ放っておけない。

(……俺、いつからこんなに意識してたんだ?)

それに気づいた瞬間、
心のどこかに火が灯ったような、落ち着かない感覚があった。

香奈衣がふと、テーブルに手をついた。

「……ったく、重い物持ちすぎて、指に張りが……」

「え、貸してください」

とっさに彼女の手を取ると、
想像以上に華奢な指先が、自分の手にすっぽりと収まった。

(うわ、ちか……)

「……島崎?」

「っす、ごめん、、、」

あわてて手を引っ込める。
ただ、それだけで心拍が跳ね上がる。

香奈衣はどこか怪訝そうな顔をしながらも、
「……やっぱあんた、変なヤツ」とつぶやいた。

けれど、完全に怒っているわけでもなさそうで――

その言葉が、
少しだけ“距離が縮んだ気がした”。

(……もうちょっと、近づいてみたらどうなるんだろ)

そんな好奇心と、
胸の奥でふつふつと立ち上がる衝動。

この人に対してだけは、
ふざけてごまかすだけじゃ済ませたくない――
そんな風に、思ってしまっていた。