シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

舞香の笑い声が収まると、
ふたりのあいだに、ふっと静かな呼吸だけが残った。

ソファに深く座りなおした舞香が、
軽くまぶたを閉じる。

その様子を見ながら、海斗がそっと手を伸ばした。

「……こっち、おいで」

それは、命令でも、お願いでもなくて――
ただ、静かな誘いだった。

舞香は迷うことなく、
彼の胸元に、すっと体を預ける。

ぎゅう、という音がしそうなくらい、しっかりと。

「……こんなに安心したの、ひさしぶりかも」

舞香のつぶやきに、
海斗は何も言わず、彼女の髪に頬を寄せた。

指先で優しく撫でながら、
自分の鼓動を彼女に預けるように、そっと抱きしめる。

部屋の中は静かで、
窓から差し込む光がカーテンの隙間から揺れていた。

テレビも、音楽も、何もない時間。

でも、それがとても心地よかった。

「……海斗さん」

「ん」

「ちゃんと寝てね。昨日、ほとんど寝てないでしょ」

「舞香がちゃんと休めてるか、確認してから」

「……やっぱり、ずるい」

「何が」

「そうやって全部、抱え込もうとするところ」

くすぐったく笑いながら、
舞香は彼の胸元に顔を埋めた。

「でも、そういうとこ……ほんとに、好き」

「……やっぱりずるいのは、お前の方だな」

そんなやり取りのあと――

ふたりはしばらく何も言わず、
互いの温もりだけを感じながら、
まどろみの中に身を委ねていった。

ただ、となりにいる。
それだけで、何もかもが満たされていた。