シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

式が終わり、控えめな歓談の時間が始まったころ。
舞香は会場の端で、緊張しながらも深呼吸をしていた。

背後から、静かな足音。

「高島さん」

振り返った先に、あの人がいた。
グレーの制服をきちんと着こなし、ややかたい表情のまま、しかしどこか優しい目をしていた。

「……あのときは、助けていただいてありがとうございました」

舞香は、自然と頭を下げていた。

「いえ……本当によかったです。無事で」

朝比奈――その名札に記された文字を、舞香は胸の奥でゆっくりと読み取る。

「舞香さんの行動がなければ、もっと被害は大きくなっていたと思います」

「そんな……私、ただ、怖くて……動いていた、だけで」

言いかけて、舞香は自分の声が少し震えていることに気づいた。

朝比奈は、すこしだけ微笑んだ。

「それでも、人を守るために動いたことは、きっと、本物です」

その言葉が、心の奥に、静かに沈んでいった。