シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

舞香はそっと、海斗の頭に手を伸ばした。

指先が、黒髪をすくい上げる。
火災現場の名残か、うっすらと煤の匂いがまだ残っている。

その匂いが、どこか切なくて、
でも、海斗が今ここに“ちゃんと戻ってきてくれた”証のように感じられて――

「……この匂い、なんか落ち着く」

「落ち着く、って……煙くさくない?」

「ううん、安心するの。ちゃんと戻ってきてくれた感じがするから」

優しく、愛おしそうに、何度も髪を撫でる。

海斗は最初、黙って受けていたが、
しだいにその指先が首元に近づくにつれ、
じわじわと耳まで赤く染まりはじめた。

「……舞香、それ以上は」

「なに?」

舞香は小首をかしげて、
するりと肩に体を預けた。

そのまま彼の胸にぴたりとくっついて、
少し上目で見つめるようにして甘える。

「……さみしかったんだから。
会えない間、ほんとに……どうしようかと思ってたんだからね?」

その声に、海斗の喉がかすかに鳴る。

「……そ、それ、今言う……?」

「うん、今じゃなきゃ言えない」

舞香が頬を擦り寄せるように体をさらに密着させると、
海斗はふっと息を呑み、
耳の先まで真っ赤になった。

「……ちょ、まじで、やめて。
俺、ほんとに歯止め効かなくなるから」

その言葉に、舞香はふわっと笑った。

「でも、我慢してくれてるの知ってるよ」

「だから……それが危ないって言ってる」

海斗は真顔でそう言いながら、
そっと舞香の頭に額を押しあてた。

理性のギリギリを保ちながら、
それでも彼の体温は、もう隠せないほど熱を帯びていた。