シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

ブランケットの上で肩を並べ、
ふたりは小さく落ち着いた呼吸を揃えていた。

舞香は、海斗の大きな手のひらを見つめながら、
ぽつりと呟いた。

「……この前の火災のとき、外に出て……
海斗さんが、別の女性の方を介抱してるの、見えたの」

海斗がわずかに瞬きをする。

舞香はそのまま、ゆっくり言葉を紡いだ。

「もちろん、仕方ないって思った。
あの人も苦しそうだったし、助けられるのは……海斗さんしかいなかったから。
だけど……それでも、どこか胸がぎゅってして」

顔を伏せながら、
ほんの少し笑ってみせる。

「……変だよね、私。あんな状況だったのに……妬いてたのかもしれない」

その言葉に、海斗の表情がやわらかく揺れた。

「変じゃない。むしろ……うれしい」

「え……?」

「俺が、そう思わせる相手でよかったって思う」

舞香は、その手のひらをそっと引き寄せた。

そして、
彼の手の甲に、自分の唇を“ちゅ”っと軽く押し当てる。

ほんの一瞬、音が弾んだ。

驚いたように目を見開く海斗に、
舞香は小さく笑いながら目を伏せた。

「今は、私だけ見てて」

そのひとことに、
彼の頬がわずかに赤く染まった。

言葉も出さず、ただ頷いた海斗の手が、
そっと舞香の髪に触れた。

この部屋の空気は、
もうふたりだけのものだった。