シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

「痛み、強いですか?」

「……平気です。たいしたこと、ないので」

舞香は、笑ってみせた。
頬がこわばるほどの笑顔だった。

池野は何も言わず、そっと舞香の正面にしゃがみ込む。

「靴、脱がせますね。無理には動かさないので」

「……はい」

少しずつずらすようにして外された靴の下、
舞香の右足は明らかに腫れていた。

池野が冷却パックを当てながら、小さく笑う。

「“たいしたことない”って、何度も言ってるけど……
本当は、結構痛いですよね?」

「……そう、かもしれないです」

ぽつりと答えたその声は、
ほんの少し、揺れていた。

「……我慢しないでください。」

池野がそう言ったあと、少しだけ間を空けて、
小さくつぶやいた。

「……まあ、朝比奈さんほど頼りがいはないかもしれないけど」

その瞬間――舞香は、顔を上げた。

「そんなこと、ないです」

強い声だった。

「池野さん、すごく頼りになります。
丁寧で、ちゃんと見てくれてて……あの時も、今日も……
朝比奈さんも頼りにしてると思います」

言いながら、舞香の目尻に、涙がにじんだ。

「……泣きたくないのに、ごめんなさい」

池野は、やわらかく微笑んだ。

「大丈夫ですよ。
これから病院に行くまで、僕がついてます」

「……ありがとうございます」

その声は、震えていたけど、もう無理には笑っていなかった。

彼女は誰かの前で、素直に“支えられる”ということを、受け入れられた気がした。