シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

日曜の午後、街のインテリアショップ。

「……これ、かわいくない? 木のスパイスラック」

舞香が小さな棚を手に取って振り返ると、
海斗が隣からひょいと覗き込んできた。

「いいね。……でも、今の舞香のキッチンに置いたら、ちょっと狭くならない?」

「そうなんだよね……でも、こっちにある調味料が多くなってきちゃって」

「ふたり分だからね」

さりげないその言葉に、
舞香の頬がほんのり赤く染まった。

店内を歩きながら、
キッチン道具、タオル、ラグマット――
“ふたりで使う前提”で、ひとつひとつを選んでいく。

「この色、海斗くんの部屋にも合いそう」

「……じゃあ、いっそ“ふたりの部屋”に合わせる?」

舞香が顔を上げると、
海斗はまっすぐ彼女の目を見ていた。

「まだ“同棲しよう”って、ちゃんと言えてなかったけど。
……そろそろ、言葉にしたくなった」

「……うん。言って?」

海斗は一歩近づいて、
周囲に誰もいないのを確認すると、
小さく笑って耳元にささやいた。

「舞香と、一緒に暮らしたい。
……これからずっと、毎日一緒に、朝も夜も」

舞香は小さく息を飲み、
そっと彼の胸に額をあずける。

「……うん。私も、そう思ってた」

「じゃあ……このソファ、どう?」

「ちょっとやわらかすぎるかも」

「そっか。じゃあ、次の店でも見てみよう」

肩を並べて歩くふたりの姿に、
何も知らない通行人が、恋人同士の当たり前の空気を感じ取っていた。