シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

川沿いのベンチで、ふたりは隣同士に座っていた。

風は少し肌寒くて、
けれど、海斗の肩にふれた瞬間、舞香は自然と深く息をついた。

「……落ち着くね、こうしてると」

「俺も。
なんか……もうちょっとで、何かが壊れそうなくらい」

「え?」

海斗は苦笑したように目を伏せる。

「……舞香の全部に、触れたくて仕方ないんだよ。
髪も、指も、唇も、心も……
でも、焦っちゃいけない気がして、
大事にしたいのに、我慢できそうにない自分がいてさ」

舞香は言葉を失ったまま、ただ彼を見つめた。

「……海斗くん」

「だって、可愛すぎる。
舞香が俺の隣で、こんな顔して俺を見てくるから……」

ふいに、海斗が舞香の髪をゆっくりと耳にかける。
指先がそのまま、そっと頬をなぞって、
顎のラインに触れる。

「……抱きしめていい?」

「うん……」

許した瞬間、彼の腕がやさしく、でも強く舞香を包み込んだ。

「もう……全部、好きすぎて苦しい」

「私も……海斗くんになら、何されても、たぶん大丈夫」

その言葉に、海斗の表情が揺れる。

そして、抱き寄せたまま顔を傾け、
舞香の耳たぶに“ちゅっ”と甘く吸い上げるキスを落とした。

「っ……」

びくん、と舞香の体が跳ねる。
でも、彼の腕の中で逃げずに、ただ小さく震えるだけだった。

「今、キスしたかっただけじゃない。
……“舞香がどこまで俺を受け入れてくれるか”を、
試したくなってた」

「うん……でも、ちゃんと伝わってるよ。
海斗くんの優しさ、全部」

それは、ただ欲しいだけの衝動じゃなかった。
触れたくて、でも壊したくない――その矛盾の中で、
ひとつずつ、愛が育っていた。

「……今はここまでにする。
俺のこと、信じてくれてありがとう」

「信じてる。ずっと、信じてたいと思ってる」

ふたりの間に流れる時間が、
まるで呼吸のように、ぴたりと重なっていく。

そしてまた、
そっと耳元に、甘い口づけがひとつ。