シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある

封筒を膝の上に置いたまま、舞香はしばらく無言だった。
鼓動が少し速くなっているのは、たぶん気のせいじゃない。
でも、それが何を意味するのか、彼女はまだ言葉にできなかった。

「……私なんかに、直接お礼なんて、変ですよね」

ぽつりと呟くと、香奈衣は呆れたように笑った。

「変じゃないでしょ。あんた、命張って動いてたんだから」

舞香は言い返せず、曖昧に笑った。
感謝されることには慣れていない。
むしろ、逃げたくなる。

香奈衣が立ち上がる。

「退院、来週頭くらいだってさ。
その前に、ちょっと気持ちの準備しときな」

「……はい」

答えながらも、舞香はまだよく分かっていなかった。
ただ、なぜだか、胸の奥に残っている“あの声”を思い出すたびに、少しだけ背筋が伸びる気がした。