「僕達がいま進んでいるこの道こそがザク王国の滅亡から復興へと向かうスタートということです」
ラムザの説明を聞きながら俺は車内をキョロキョロと見渡す。
この列車の限りなき違和感、自分の知っている世界とは明確に違うその何かとは、人であった。
「あんたはなにをそんなに落ち着かないの?」
アルマの不審げな声に対して俺は尋ね返した。
「なんで利用者が俺達だけなのに走っているんだ? もっとたくさん利用者がいるはずだろうに」
「利用者? あんたはお客さんのことを利用者って言うの? 変なの」
「あっ、昔はそうだったようですね。お客様と呼ぶ前は利用者だったとか。
それとヤヲさん。この車両はザク王室用のいわば個室なので他のお客さんは乗ってこないで走るのですよ」
「列車に個室があるのか。こんなに広く……じゃあ別車両ではぎゅうぎゅう詰めとなっているわけか。可哀想だな」
「何を言っているの? 他の車内だってそれほど混んでいないわよ」
「お前こそ何を言ってるんだ。こんな朝八時台の列車なんて人が溢れんばかりに車内に入って大変になっているだろ。
車内に押し込むように屈強な駅員が配置され窓ガラスが割れて利用者がはみ出て外に落ちたりすることもざらにあるはずだ」
「なんて殺伐とした馬鹿で愚かな光景。肉詰め料理を作ってんじゃないんだからそこまでする必要がないわよ。
押し込むとか違う方法で何とかしなさいよね。しかしどうしてそこまでして乗るの? 違う方法で出勤したらいいじゃない」
「いや、それが仕事というもので、辛いほど良いといって」
「出勤は仕事じゃないの。変なの、仕事する前に疲労困憊するなんて愚の骨頂。そもそもそんなに列車に乗る人はいないしさ」
「そうですね。ヤヲさんのお話は約五十年前の大人口時代の世間の光景でしょう。
魔王による戦争や厄災が起こる前は労働人口が過剰という状態であって列車に乗るのも競争みたいなものだったらしいですね」
「そういう時代になったのか。道理で人が少ないと思った。
都市部は極端にそうだったな。俺は地方にいたからそれがあまり分からなかったが一度都市に仕事に行ったら駅がそれですごく驚いた。
人で溢れんばかりの駅のホームに文字通り毎分ごとにやってくる列車に人の波、なんでこんなに人がいるんだろうと思うばかりで」
「今じゃもうそんな光景は過去の遺物よ。人口は減少傾向で誰もが椅子に座れる空間、それが現代の列車事情よ」
「人の価値が上がったようで良いな。
俺の頃はお前の代わりはいくらでもいると人は使い捨て状態にするのが、合理的かつ最適だと言わんばかりの扱いでな」
「代わりなんているはずないのに変なの。そんなことするから人口がそのまま減少しちゃったのよ。
まぁだからあんたは茶農家から旅立ったわけよね」
「なんで俺の実家のことを知ってるんだ? オヴェリアちゃんから聞いたのか?」
「あのさぁ、いちいち聞き返さないで貰える? こんなの一般常識なんだからさ」
「どこが一般常識なんだよ。なんだか俺が間違えているような気がしてきた」
「まぁまぁ落ち着いてください。とりあえずこの列車はグラン・ベルンに向かいまして、
その次がエバンスへと到着いたします」
「そうか俺の地元へ向かうのか。しかしなんで……一般常識ってやつか?」
「ふんっ、あんただけのじゃなくてノイスとアレクの故郷でもあるしさ当然でしょ?
この列車は第一次聖戦と関係があるところを全て通るんだからさ」
「そうだよな……そうだ。それならあそこに行くのは当然だな。
それでいま通っているここはオヴェリアちゃんの道となるのか?
そういえば二人の服の色ってオヴェリアちゃんのが着ていた服に似ているな。
特別な日とかに着て俺によく自慢していたな。どうです綺麗でしょうって亅
「……似ているというか、同じですね。ザク王室の正装の色はこれですし」
「いや、色はもうちょっと薄かったような気もするけど」
「それは国外脱出時に着の身着のままだったためでしょうね。
御婆様は話してくれたけどそういう時は一番上等で出来の良い服で旅立ちなさいって。
だとしたらザク家のものはこの生地のこの色の服で出るわね。
薄いというのは旅の苦労や傷によって色褪せてしまったからでしょう。
実際はこれと当時のとはあまり大差はないわ。
苦労のない純粋無垢ないわゆるザク色である緑の衣装よ」
アルマの言葉に俺は目蓋を閉じて思い出す。
彼女のその服の色をそして想像の中で色を濃くしたら、それはいまのアルマの色と同じでありそしてそれこそが本当に見せたかった色であったと。
「そうかそういうことだったのか。他に数着の服以外は持ち出せない旅路であったわけで」
「魔王の侵攻で国が滅ぼされましたし。
ザクは龍殺しの里という異名がある世界屈指の剣士の国でしたから狙われたとのことです」
ラムザの内容にそぐわない声の明るさに俺は未来というか現在を思った。
もう孫の代には滅亡は過去でありそして歴史であると。
「オヴェリアちゃんとディータが復興させたのはこれからずっと先だな」
「そうです。先ず御婆様と御爺様は二手に分かれますね。
御爺様は山岳ルートを辿りそちらで応援の要請そして御婆様は隣国へと向かい勇者の隊と合流するわけです」
「それはジーク様と合流するということだな」
ラムザの説明を聞きながら俺は車内をキョロキョロと見渡す。
この列車の限りなき違和感、自分の知っている世界とは明確に違うその何かとは、人であった。
「あんたはなにをそんなに落ち着かないの?」
アルマの不審げな声に対して俺は尋ね返した。
「なんで利用者が俺達だけなのに走っているんだ? もっとたくさん利用者がいるはずだろうに」
「利用者? あんたはお客さんのことを利用者って言うの? 変なの」
「あっ、昔はそうだったようですね。お客様と呼ぶ前は利用者だったとか。
それとヤヲさん。この車両はザク王室用のいわば個室なので他のお客さんは乗ってこないで走るのですよ」
「列車に個室があるのか。こんなに広く……じゃあ別車両ではぎゅうぎゅう詰めとなっているわけか。可哀想だな」
「何を言っているの? 他の車内だってそれほど混んでいないわよ」
「お前こそ何を言ってるんだ。こんな朝八時台の列車なんて人が溢れんばかりに車内に入って大変になっているだろ。
車内に押し込むように屈強な駅員が配置され窓ガラスが割れて利用者がはみ出て外に落ちたりすることもざらにあるはずだ」
「なんて殺伐とした馬鹿で愚かな光景。肉詰め料理を作ってんじゃないんだからそこまでする必要がないわよ。
押し込むとか違う方法で何とかしなさいよね。しかしどうしてそこまでして乗るの? 違う方法で出勤したらいいじゃない」
「いや、それが仕事というもので、辛いほど良いといって」
「出勤は仕事じゃないの。変なの、仕事する前に疲労困憊するなんて愚の骨頂。そもそもそんなに列車に乗る人はいないしさ」
「そうですね。ヤヲさんのお話は約五十年前の大人口時代の世間の光景でしょう。
魔王による戦争や厄災が起こる前は労働人口が過剰という状態であって列車に乗るのも競争みたいなものだったらしいですね」
「そういう時代になったのか。道理で人が少ないと思った。
都市部は極端にそうだったな。俺は地方にいたからそれがあまり分からなかったが一度都市に仕事に行ったら駅がそれですごく驚いた。
人で溢れんばかりの駅のホームに文字通り毎分ごとにやってくる列車に人の波、なんでこんなに人がいるんだろうと思うばかりで」
「今じゃもうそんな光景は過去の遺物よ。人口は減少傾向で誰もが椅子に座れる空間、それが現代の列車事情よ」
「人の価値が上がったようで良いな。
俺の頃はお前の代わりはいくらでもいると人は使い捨て状態にするのが、合理的かつ最適だと言わんばかりの扱いでな」
「代わりなんているはずないのに変なの。そんなことするから人口がそのまま減少しちゃったのよ。
まぁだからあんたは茶農家から旅立ったわけよね」
「なんで俺の実家のことを知ってるんだ? オヴェリアちゃんから聞いたのか?」
「あのさぁ、いちいち聞き返さないで貰える? こんなの一般常識なんだからさ」
「どこが一般常識なんだよ。なんだか俺が間違えているような気がしてきた」
「まぁまぁ落ち着いてください。とりあえずこの列車はグラン・ベルンに向かいまして、
その次がエバンスへと到着いたします」
「そうか俺の地元へ向かうのか。しかしなんで……一般常識ってやつか?」
「ふんっ、あんただけのじゃなくてノイスとアレクの故郷でもあるしさ当然でしょ?
この列車は第一次聖戦と関係があるところを全て通るんだからさ」
「そうだよな……そうだ。それならあそこに行くのは当然だな。
それでいま通っているここはオヴェリアちゃんの道となるのか?
そういえば二人の服の色ってオヴェリアちゃんのが着ていた服に似ているな。
特別な日とかに着て俺によく自慢していたな。どうです綺麗でしょうって亅
「……似ているというか、同じですね。ザク王室の正装の色はこれですし」
「いや、色はもうちょっと薄かったような気もするけど」
「それは国外脱出時に着の身着のままだったためでしょうね。
御婆様は話してくれたけどそういう時は一番上等で出来の良い服で旅立ちなさいって。
だとしたらザク家のものはこの生地のこの色の服で出るわね。
薄いというのは旅の苦労や傷によって色褪せてしまったからでしょう。
実際はこれと当時のとはあまり大差はないわ。
苦労のない純粋無垢ないわゆるザク色である緑の衣装よ」
アルマの言葉に俺は目蓋を閉じて思い出す。
彼女のその服の色をそして想像の中で色を濃くしたら、それはいまのアルマの色と同じでありそしてそれこそが本当に見せたかった色であったと。
「そうかそういうことだったのか。他に数着の服以外は持ち出せない旅路であったわけで」
「魔王の侵攻で国が滅ぼされましたし。
ザクは龍殺しの里という異名がある世界屈指の剣士の国でしたから狙われたとのことです」
ラムザの内容にそぐわない声の明るさに俺は未来というか現在を思った。
もう孫の代には滅亡は過去でありそして歴史であると。
「オヴェリアちゃんとディータが復興させたのはこれからずっと先だな」
「そうです。先ず御婆様と御爺様は二手に分かれますね。
御爺様は山岳ルートを辿りそちらで応援の要請そして御婆様は隣国へと向かい勇者の隊と合流するわけです」
「それはジーク様と合流するということだな」


