「このホリン・オークスは現在でもザク王族の一員だとはみなされてはおりません。
ザク城陥落による炎上で史料の大半が燃えてしまい、王家の血筋であるという確認が今に至るまで取れていません。
御婆様の話ではおそらくは遠い親戚で国外に移住……または追放されたものの末裔の可能性があるとのことですが詳しくは不明。いまは自称元王族という扱いになっています」
ラムザが手帳を広げながら言うとアルマが続いた。
「けれどもあながち嘘ではないでしょうね。王家の特徴のひとつである金髪とその剣技は誤魔化しようがないもの。
彼は謎の剣士として勇者隊に入り活躍しているわけよ。ここで颯爽と現れて大叔母様を助けるだなんて良いじゃない。初対面としてはこれ以上になく最高ね。っでところであんたはなにしてたっけ?」
「いま聞いただろ? 俺は敵と戦っていたって」
俺の言葉にアルマは大げさに手を挙げた。
「あらあらそうだったのごめんなさい。比較したら印象が薄くて聞いた傍から忘れちゃった。
それよりも嫉妬で身を焦がしたり、相変わらず助けてもらった癖にありがとうと言えないあたりに目が行っちゃった。
ああ! 目を覆いたくなるような醜態。言うべき時に言うべきことを言えないって、やっぱり人間としてどうかと私は思うんだけど、あんたはそうは思わないようね」
「挑発するなよアルマ。お前の場合は余計なことを言い過ぎて人間としてどうなんだになるぞ。
だいたいヤヲさんだってアグ叔母様の背中を守っただろ」
「そうねそこは認めてあげるけどさ、大叔母様はそこに多分気付いていないでしょうね。まぁそこは気づいたとしてもホリンという新しい素敵な男の登場の方が印象が深過ぎてすぐに忘れちゃったでしょうし。
まさかあんたは君の背中を僕は守ってあげたんだよ? とかアピールしなかったでしょうね?
していないよね? お願いだからやめて? もうこれ以上私をいたたまれない気分にさせないで」
「出来るかそんなこと。したかったが、できなかった。
その代わりにオヴェリアちゃんへの戦況報告ではそのあたりの状況を詳細に述べて、そこ経由で彼女に伝わったらいいなと思っていたな」
「想像の斜め上をいくなんてみみっちい男! あんたらしいやり口ね。それで伝わったの?」
「分からない。まぁオヴェリアちゃんは自分の弟子の活躍には痛く感激していたのか、珍しくよくやりましたね弟子! と何杯も酒を注いでくれたが」
俺が手酌の真似をするとラムザは驚いた。
「待ってください、御婆様は未成年飲酒していたのか!」
「昔は十八ぐらいで平気で呑んでいたが……いや、その日はちょうどオヴェリアちゃんの誕生月であったからもう十五となっていたようだ。
そっちだと元服と言うんだろ? その祝いと俺の祝賀会も兼てな」
「まぁそんなおめでたい席があんたのお祝いと兼任とは、ずいぶんと偉くなったわね」
「だってその席での諸費用はほぼ俺持ちだったし。
弟子なのだから師匠の成人式を祝うのは大切な義務ですよとか前代未聞なことを言われてな、逆だろそれって」
「なら納得だわ。良かったじゃないの未来の女王様のお祝いの席に出られて。生涯の名誉にしなさいよ」
「どこが名誉なんだが。まぁそこでオヴェリアちゃんは呑み過ぎてすぐに眠ってしまったが、俺の話を覚えているのか結構不明だ」
「その席にはホリン氏はいたのですか?」
「いや、いない。ホリンについてアグから報告を受けたようだが、オヴェリアちゃんは彼を様子見にしたようだ。
ありがたいといってはあれだが、彼女はホリンのことをあまり好いてはいなかったかもしれないな」
ラムザが頷いた。
「状況からしたら妥当なところですね。自称元王族が自分や叔母に近づいて来たらひとまず警戒するでしょうし」
「そんなこといったらこいつはどうなるのよ?」
アルマが俺を指差した。
「なぜか警戒されてはいなかったな」
「ザク史上最悪の要警戒人物になる癖にね」
「御婆様からするとヤヲさんはその時点では警戒しなくていいが、ホリン氏は警戒する必要があったというところですね。
それでアグ叔母様としては彼に対してどうだったのでしょうかね」
「そんなのは決まっているじゃない。
ここまでで大叔母様はホリンに好意を寄せてこいつがそれに対して嫉妬する流れよ。
これによって生まれた憎しみからこいつが二人は死に関わってその前後で闇堕ち、そして破滅願望からの御婆様暗殺未遂へと繋がっていく。
もっとも分かりやすいものとしたらこれね」
「そんなに決めつけるな!」
「なによラムザ! じゃあどうしたらいいのよ!」
俺は二人の間に入り手で制す。
「その流れで良いと思う」
「あなたもどうしてそんな」
ラムザとアルマは眉を顰める。
「事実だからな。俺は二人の仲に嫉妬していた。
彼女は俺の傍にいるべきなのに奴の出現以来それが減った。純粋にそれは憎しみを抱く。そのうえだ、あいつは俺に対してとても親切だった。
初めて会った時に助けてくれたようにな。そこもまた俺の劣等感を高めてくれた。たぶん彼は俺について特に眼中になかったんだ。はじめのころからずっと。感情の独り相撲であったのかもな」
「じゃあ、ほんとうに、あんたは……」
「そこは分からない。
お前の言った流れと繋がりで間違いはないはずなのに、思い出すことができない。
そこに辿り着く前に思い出せることのひとつは、俺はアグを愛しホリンを憎んでいたこと、これは紛れもない真実だ」
ザク城陥落による炎上で史料の大半が燃えてしまい、王家の血筋であるという確認が今に至るまで取れていません。
御婆様の話ではおそらくは遠い親戚で国外に移住……または追放されたものの末裔の可能性があるとのことですが詳しくは不明。いまは自称元王族という扱いになっています」
ラムザが手帳を広げながら言うとアルマが続いた。
「けれどもあながち嘘ではないでしょうね。王家の特徴のひとつである金髪とその剣技は誤魔化しようがないもの。
彼は謎の剣士として勇者隊に入り活躍しているわけよ。ここで颯爽と現れて大叔母様を助けるだなんて良いじゃない。初対面としてはこれ以上になく最高ね。っでところであんたはなにしてたっけ?」
「いま聞いただろ? 俺は敵と戦っていたって」
俺の言葉にアルマは大げさに手を挙げた。
「あらあらそうだったのごめんなさい。比較したら印象が薄くて聞いた傍から忘れちゃった。
それよりも嫉妬で身を焦がしたり、相変わらず助けてもらった癖にありがとうと言えないあたりに目が行っちゃった。
ああ! 目を覆いたくなるような醜態。言うべき時に言うべきことを言えないって、やっぱり人間としてどうかと私は思うんだけど、あんたはそうは思わないようね」
「挑発するなよアルマ。お前の場合は余計なことを言い過ぎて人間としてどうなんだになるぞ。
だいたいヤヲさんだってアグ叔母様の背中を守っただろ」
「そうねそこは認めてあげるけどさ、大叔母様はそこに多分気付いていないでしょうね。まぁそこは気づいたとしてもホリンという新しい素敵な男の登場の方が印象が深過ぎてすぐに忘れちゃったでしょうし。
まさかあんたは君の背中を僕は守ってあげたんだよ? とかアピールしなかったでしょうね?
していないよね? お願いだからやめて? もうこれ以上私をいたたまれない気分にさせないで」
「出来るかそんなこと。したかったが、できなかった。
その代わりにオヴェリアちゃんへの戦況報告ではそのあたりの状況を詳細に述べて、そこ経由で彼女に伝わったらいいなと思っていたな」
「想像の斜め上をいくなんてみみっちい男! あんたらしいやり口ね。それで伝わったの?」
「分からない。まぁオヴェリアちゃんは自分の弟子の活躍には痛く感激していたのか、珍しくよくやりましたね弟子! と何杯も酒を注いでくれたが」
俺が手酌の真似をするとラムザは驚いた。
「待ってください、御婆様は未成年飲酒していたのか!」
「昔は十八ぐらいで平気で呑んでいたが……いや、その日はちょうどオヴェリアちゃんの誕生月であったからもう十五となっていたようだ。
そっちだと元服と言うんだろ? その祝いと俺の祝賀会も兼てな」
「まぁそんなおめでたい席があんたのお祝いと兼任とは、ずいぶんと偉くなったわね」
「だってその席での諸費用はほぼ俺持ちだったし。
弟子なのだから師匠の成人式を祝うのは大切な義務ですよとか前代未聞なことを言われてな、逆だろそれって」
「なら納得だわ。良かったじゃないの未来の女王様のお祝いの席に出られて。生涯の名誉にしなさいよ」
「どこが名誉なんだが。まぁそこでオヴェリアちゃんは呑み過ぎてすぐに眠ってしまったが、俺の話を覚えているのか結構不明だ」
「その席にはホリン氏はいたのですか?」
「いや、いない。ホリンについてアグから報告を受けたようだが、オヴェリアちゃんは彼を様子見にしたようだ。
ありがたいといってはあれだが、彼女はホリンのことをあまり好いてはいなかったかもしれないな」
ラムザが頷いた。
「状況からしたら妥当なところですね。自称元王族が自分や叔母に近づいて来たらひとまず警戒するでしょうし」
「そんなこといったらこいつはどうなるのよ?」
アルマが俺を指差した。
「なぜか警戒されてはいなかったな」
「ザク史上最悪の要警戒人物になる癖にね」
「御婆様からするとヤヲさんはその時点では警戒しなくていいが、ホリン氏は警戒する必要があったというところですね。
それでアグ叔母様としては彼に対してどうだったのでしょうかね」
「そんなのは決まっているじゃない。
ここまでで大叔母様はホリンに好意を寄せてこいつがそれに対して嫉妬する流れよ。
これによって生まれた憎しみからこいつが二人は死に関わってその前後で闇堕ち、そして破滅願望からの御婆様暗殺未遂へと繋がっていく。
もっとも分かりやすいものとしたらこれね」
「そんなに決めつけるな!」
「なによラムザ! じゃあどうしたらいいのよ!」
俺は二人の間に入り手で制す。
「その流れで良いと思う」
「あなたもどうしてそんな」
ラムザとアルマは眉を顰める。
「事実だからな。俺は二人の仲に嫉妬していた。
彼女は俺の傍にいるべきなのに奴の出現以来それが減った。純粋にそれは憎しみを抱く。そのうえだ、あいつは俺に対してとても親切だった。
初めて会った時に助けてくれたようにな。そこもまた俺の劣等感を高めてくれた。たぶん彼は俺について特に眼中になかったんだ。はじめのころからずっと。感情の独り相撲であったのかもな」
「じゃあ、ほんとうに、あんたは……」
「そこは分からない。
お前の言った流れと繋がりで間違いはないはずなのに、思い出すことができない。
そこに辿り着く前に思い出せることのひとつは、俺はアグを愛しホリンを憎んでいたこと、これは紛れもない真実だ」


