俺達三人はいわば上京した形となった。
目的地は首都バーハラにおられる勇者ジークのところ。
謀叛者による内乱によって灰燼に帰した都であったが、もう戦いは終わり人々は復興へと進んでいる。
全ては勇者ジークのおかげである。
彼はグラン・ベルン王国の第二王子であり、外国に留学中の時期に不良貴族らによるクーデタからの内乱の報を聴きその地にて解放軍を結成。
その後は紆余曲折の末に東の龍山にて龍と契約を結ぶ「勇者」となり首都バーハラ解放戦争を発動。
これによって占領されていた首都と囚われの第一王子が解放され、グラン・ベルンは晴れて元の秩序を取り戻した。
その勇者ジークが布告を出した。
「反乱貴族であり現在魔王となった奴らを倒す戦士を集う」と。
これに乗った各地の若者たちがバーハラを目指す。
祖国解放の戦いから世界解放の戦いへ。
各地で支配を続ける魔王に対抗する各地の勇者と戦士たちの旅に後の伝説に俺達も列なるために、風で埃が舞いいまだ燻る焼き焦げた戦火の臭いを嗅ぎながらアレクとノイスは前へ前へと歩みを進め俺もその後についていく。
街の郊外の草原にそれがあった。軍隊のテントであり人々の声が聞こえる。
ここが解放軍の本拠地かと俺は期待で胸が一杯になっていくのを感じながら中へと入ろうとすると、入口のいわば門番が現れそれから俺達は幹部たちのいるという点とへと向かうその途中で男が一人見えた。
説明はなくとも勇者ジークが誰だかはすぐに分かった。
壁ではなく人がいる。デカい。とにかくデカい男だった。
家の屋根を見上げるような背丈にその厚みのある身体、俺たちとは段違いの堂々男子そのものだった。
さてその周辺には屈強な強者たちが……いない?
小さな従者がひとり侍るだけであり、他には誰もいない。
というか勇者ジークの陣営にそもそも人があまりいない。
ポツポツと人はいるのはいるが、どこか最初のイメージと違っている。
もう少し多くてもいいのに意外とこじんまりとしていた。
首都を解放したのがこの規模なのか? 主力は外出でもしているのか? 俺がそこを気にしても仕方がなく勇者ジークのところへたどり着くと、
ノイスが代表して口上を述べて跪くと勇者様は鷹揚に頷いた。
そのまま黙っているが、二人もそうだろうが俺は満足した。
言葉がなくても満足した。
一緒に戦わせてください、いいよ。これ以外の言葉は特に必要はなく求めてはいなかった。
心が通じ合っているのなら言葉は特に必要はないはずだ。
うん、これでいいと思い立ち上がると勇者様の傍らにいる従者が前に出た。
巨漢の勇者様の傍にいるから小さいのかなと思ったが、近距離から見ても身長の低いこの従者……にしては身なりは良くて顔も気品が漂わせている。
ひょっとして従者ではなかったのでは?
それどころかこの人はもしかして、勇者様の兄の第一王子!?
俺がそんな予感を以て戸惑っているとその男はこちらの怯えに気付いたように微笑んだ。
するとやはりそうなのか!
「よく来てくれたね若き戦士諸君! 我々は君たちの参戦をここらから歓迎するよ。
こちらは見た目通り勇者ジークでありこの僕は見た目とは違って勇者の兄のフリートだ」
やはりそうだと俺の予感通りでありアレクとノイスは事の重大さにすぐに気づき再び跪こうとするとフリート王子は手でそれを制した。
俺は反射が遅くて中腰となってそれを見ていた。
「気を遣わなくて良いのだよ。いまの僕は勇者の兄でありその代弁者でもある。
王子扱いは魔王を倒して世界が平和になってからにしてくれ。
奴がいる限り僕は勇者の従者なのだ。僕はどちらかに仕える運命にあるものであるのだからね」
フリート王子の最後の言葉が妙に聞こえた?
どちらかというのは勇者と誰なのか? それはジーク様とどんな関係が? 全ては謎のままであったがこのことは心に残った。
「代弁者というのは弟は龍の血の契約の代償に言葉を失い死ぬまで口が利けなくなったからだ。
まぁ御蔭で僕にも役割が出来たからいいんだけどさ。一国の王子としてこれに勝る栄光もないものだ」
お道化ながら言うフリートに立ち上がったノイスとアレクは苦笑いで反応するが、俺も自然につられ笑うが王子をとても良い人だと感じた。
無理はしているがそれでも卑屈になったり気負ったりはしてはいないその態度。
なるほど勇者の兄といったところであり、未来の王かもしくは勇者様に王位を譲るといった平和的解決ができる御仁であるとも確信できた。
「改めてよろしく三人の戦士アレクにノイスに、ええっと」
「アッアーダンです!」
「そうかアーダンだったね。よし我がパーティを案内しよう、といっても君たちがここに来るまでの間に見たのがほぼ全てだね」
「えっ! こんな小世帯で」
「無論魔王に立ち向かうんだよ! まぁこれからだこれから。まだグラン・ベルンという一つの地域を解放したに過ぎずはじまったばかりだ。
これから旅を続けていき支配地を解放していき仲間たちが増えそして魔王のところへと辿り着く。
同じく仲間である同志諸君、共に戦おう、と勇者ジークは言っているはずだ」
「はい!」
と俺達三人は声を合わせて応えると勇者兄弟は頷いた。
そう俺達は、いや俺は勇者と共に戦いそして英雄となるんだ。
その為に俺は旅立ったのだから。
目的地は首都バーハラにおられる勇者ジークのところ。
謀叛者による内乱によって灰燼に帰した都であったが、もう戦いは終わり人々は復興へと進んでいる。
全ては勇者ジークのおかげである。
彼はグラン・ベルン王国の第二王子であり、外国に留学中の時期に不良貴族らによるクーデタからの内乱の報を聴きその地にて解放軍を結成。
その後は紆余曲折の末に東の龍山にて龍と契約を結ぶ「勇者」となり首都バーハラ解放戦争を発動。
これによって占領されていた首都と囚われの第一王子が解放され、グラン・ベルンは晴れて元の秩序を取り戻した。
その勇者ジークが布告を出した。
「反乱貴族であり現在魔王となった奴らを倒す戦士を集う」と。
これに乗った各地の若者たちがバーハラを目指す。
祖国解放の戦いから世界解放の戦いへ。
各地で支配を続ける魔王に対抗する各地の勇者と戦士たちの旅に後の伝説に俺達も列なるために、風で埃が舞いいまだ燻る焼き焦げた戦火の臭いを嗅ぎながらアレクとノイスは前へ前へと歩みを進め俺もその後についていく。
街の郊外の草原にそれがあった。軍隊のテントであり人々の声が聞こえる。
ここが解放軍の本拠地かと俺は期待で胸が一杯になっていくのを感じながら中へと入ろうとすると、入口のいわば門番が現れそれから俺達は幹部たちのいるという点とへと向かうその途中で男が一人見えた。
説明はなくとも勇者ジークが誰だかはすぐに分かった。
壁ではなく人がいる。デカい。とにかくデカい男だった。
家の屋根を見上げるような背丈にその厚みのある身体、俺たちとは段違いの堂々男子そのものだった。
さてその周辺には屈強な強者たちが……いない?
小さな従者がひとり侍るだけであり、他には誰もいない。
というか勇者ジークの陣営にそもそも人があまりいない。
ポツポツと人はいるのはいるが、どこか最初のイメージと違っている。
もう少し多くてもいいのに意外とこじんまりとしていた。
首都を解放したのがこの規模なのか? 主力は外出でもしているのか? 俺がそこを気にしても仕方がなく勇者ジークのところへたどり着くと、
ノイスが代表して口上を述べて跪くと勇者様は鷹揚に頷いた。
そのまま黙っているが、二人もそうだろうが俺は満足した。
言葉がなくても満足した。
一緒に戦わせてください、いいよ。これ以外の言葉は特に必要はなく求めてはいなかった。
心が通じ合っているのなら言葉は特に必要はないはずだ。
うん、これでいいと思い立ち上がると勇者様の傍らにいる従者が前に出た。
巨漢の勇者様の傍にいるから小さいのかなと思ったが、近距離から見ても身長の低いこの従者……にしては身なりは良くて顔も気品が漂わせている。
ひょっとして従者ではなかったのでは?
それどころかこの人はもしかして、勇者様の兄の第一王子!?
俺がそんな予感を以て戸惑っているとその男はこちらの怯えに気付いたように微笑んだ。
するとやはりそうなのか!
「よく来てくれたね若き戦士諸君! 我々は君たちの参戦をここらから歓迎するよ。
こちらは見た目通り勇者ジークでありこの僕は見た目とは違って勇者の兄のフリートだ」
やはりそうだと俺の予感通りでありアレクとノイスは事の重大さにすぐに気づき再び跪こうとするとフリート王子は手でそれを制した。
俺は反射が遅くて中腰となってそれを見ていた。
「気を遣わなくて良いのだよ。いまの僕は勇者の兄でありその代弁者でもある。
王子扱いは魔王を倒して世界が平和になってからにしてくれ。
奴がいる限り僕は勇者の従者なのだ。僕はどちらかに仕える運命にあるものであるのだからね」
フリート王子の最後の言葉が妙に聞こえた?
どちらかというのは勇者と誰なのか? それはジーク様とどんな関係が? 全ては謎のままであったがこのことは心に残った。
「代弁者というのは弟は龍の血の契約の代償に言葉を失い死ぬまで口が利けなくなったからだ。
まぁ御蔭で僕にも役割が出来たからいいんだけどさ。一国の王子としてこれに勝る栄光もないものだ」
お道化ながら言うフリートに立ち上がったノイスとアレクは苦笑いで反応するが、俺も自然につられ笑うが王子をとても良い人だと感じた。
無理はしているがそれでも卑屈になったり気負ったりはしてはいないその態度。
なるほど勇者の兄といったところであり、未来の王かもしくは勇者様に王位を譲るといった平和的解決ができる御仁であるとも確信できた。
「改めてよろしく三人の戦士アレクにノイスに、ええっと」
「アッアーダンです!」
「そうかアーダンだったね。よし我がパーティを案内しよう、といっても君たちがここに来るまでの間に見たのがほぼ全てだね」
「えっ! こんな小世帯で」
「無論魔王に立ち向かうんだよ! まぁこれからだこれから。まだグラン・ベルンという一つの地域を解放したに過ぎずはじまったばかりだ。
これから旅を続けていき支配地を解放していき仲間たちが増えそして魔王のところへと辿り着く。
同じく仲間である同志諸君、共に戦おう、と勇者ジークは言っているはずだ」
「はい!」
と俺達三人は声を合わせて応えると勇者兄弟は頷いた。
そう俺達は、いや俺は勇者と共に戦いそして英雄となるんだ。
その為に俺は旅立ったのだから。


