少しずつ近づいてくる、
あの頃私が、涼太が過ごしていた街。

いつもの様に窓から視線を反らそうとした。
その瞬間、
視界の端に微かに映ったものに、
身体が、頭が、反応した。

食い入るように窓に顔を近づける。


胸が痛い。
ドクドクと早く強く音を立てる心臓。
だけど、いつもの痛みとは違う。

だって、
いたから。

私の住んでたあの家の前に、
ひとりの男の子が、
立っていたのが、
見えたから。

直感で分かった。
あの男の子は、
涼太だ。

もう、6年会っていない。

だけど私が涼太を見間違う訳がない。

アナウンスが流れドアが開く。
考えるより前に私の足が動く。

足早に改札を抜ける。
目の前に広がる昔見ていた風景。

懐かしさが込み上げる中、
うるさく高鳴る心臓を抑えながら家へと向かう。

涼太、
涼太、
涼太。

やっと会える。

ずっとずっと、待ってた。

涼太に会える時を。


そう、6年前、

私が涼太の手を払い除けたあの日から――。