「お疲れさま。……ほんとに、よく頑張ったな」
尚紀がそう言って咲の頬に触れたのは、臨時取締役会が終わり、すべてが収束へと向かい始めた夜だった。
咲は、静かに頷いた。
「私じゃ、力になれないかもしれないって思ったけど……言えてよかった。“この人が、私の誇り”だって」
尚紀は、微笑む。
「誰よりも、力になったよ。あの言葉だけで、全部吹き飛んだ」
ふたりは、リビングのソファに並んで腰を下ろしていた。
夜は深く、静かだった。
どちらからともなく、自然に指が重なり合い、手のひらの温度が伝わる。
「……ねえ、尚紀さん」
「うん?」
「……今夜、隣にいてもいい?」
咲の声は、ごく小さな囁きだった。
尚紀は、彼女をまっすぐに見つめる。
「……ずっと、待ってたよ。その言葉を」
咲は恥ずかしさに思わず目を伏せたけれど、もうその手を離すことはなかった。
ベッドルームに移ると、部屋には柔らかな照明と、ほんのり甘い香りが漂っていた。
尚紀がゆっくりと咲の肩に手を置く。
「……大丈夫?」
咲は小さく頷いた。
「怖くない。……あなたと一緒なら」
尚紀は、彼女の髪をそっと撫で、耳元に口を近づける。
「焦らないよ。何も、無理はしない。……ただ、今夜は、君と同じ時間を過ごしたいだけ」
咲の心臓が、どくん、と音を立てた。
「……私も、そう思ってる」
手を重ね、ゆっくりと、咲の背中に腕を回す。
まるで触れ合うことそのものが、愛の証のようだった。
静かにキスを重ね、呼吸が交わる。
唇が離れるたび、心がさらに近づいていくようだった。
「尚紀さん……」
「咲。……君は、世界でいちばん、綺麗だよ」
そんな直球の言葉に、咲の頬はますます赤くなる。
「……もう、そういうこと言わないで」
「言うよ。今夜だけじゃない、これから毎晩、言うつもり」
「……ばか」
それでも、咲の声には笑みがあった。
ふたりは、ベッドに身体を預けるように並んで横たわった。
尚紀は、咲の指先をひとつひとつ撫でながら囁く。
「咲、いい?」
「うん……お願い、尚紀さん」
その声は震えていたけれど、拒む色はなかった。
時間は、ゆっくりと流れていった。
深く、静かに、心と心を重ね合うように。
体温が重なり、言葉では伝えきれなかった想いが、互いに染み込んでいくようだった。
熱を持った肌が触れ合うたび、ふたりは何度も目を合わせた。
その瞳の奥にある、確かな信頼と、永遠を誓うような想いを。
「……好き。尚紀さんの全部が、好き」
「俺も……咲がすべてだよ」
彼が咲の名前を呼ぶたびに、咲の胸の奥がふるえる。
それはもう、恋ではなく、確かな“愛”だった。
夜が明ける頃。
ベッドの中で、尚紀は咲の肩を抱いたまま、頬を寄せていた。
「……眠れない?」
「ううん。安心しすぎて、ふわふわしてるだけ」
咲が微笑むと、尚紀もまた優しく笑った。
「ねえ、咲」
「なに?」
「これからは、何があっても、こうやって君を抱いて寝たい」
「……うん。私も、あなたの隣がいちばん落ち着く」
尚紀は、そっと彼女の額にキスを落とした。
「今日から、やっと“本物の夫婦”になれた気がする」
咲も静かに頷いた。
(たくさんの遠回りをしてきたけれど——)
(この場所に辿り着けたことが、何よりの幸せ)
新しい朝が、ふたりの上に差し込んでいた。
もう、迷わなくていい。
もう、すれ違わなくていい。
この愛を、確かに手に入れた夜だった。
尚紀がそう言って咲の頬に触れたのは、臨時取締役会が終わり、すべてが収束へと向かい始めた夜だった。
咲は、静かに頷いた。
「私じゃ、力になれないかもしれないって思ったけど……言えてよかった。“この人が、私の誇り”だって」
尚紀は、微笑む。
「誰よりも、力になったよ。あの言葉だけで、全部吹き飛んだ」
ふたりは、リビングのソファに並んで腰を下ろしていた。
夜は深く、静かだった。
どちらからともなく、自然に指が重なり合い、手のひらの温度が伝わる。
「……ねえ、尚紀さん」
「うん?」
「……今夜、隣にいてもいい?」
咲の声は、ごく小さな囁きだった。
尚紀は、彼女をまっすぐに見つめる。
「……ずっと、待ってたよ。その言葉を」
咲は恥ずかしさに思わず目を伏せたけれど、もうその手を離すことはなかった。
ベッドルームに移ると、部屋には柔らかな照明と、ほんのり甘い香りが漂っていた。
尚紀がゆっくりと咲の肩に手を置く。
「……大丈夫?」
咲は小さく頷いた。
「怖くない。……あなたと一緒なら」
尚紀は、彼女の髪をそっと撫で、耳元に口を近づける。
「焦らないよ。何も、無理はしない。……ただ、今夜は、君と同じ時間を過ごしたいだけ」
咲の心臓が、どくん、と音を立てた。
「……私も、そう思ってる」
手を重ね、ゆっくりと、咲の背中に腕を回す。
まるで触れ合うことそのものが、愛の証のようだった。
静かにキスを重ね、呼吸が交わる。
唇が離れるたび、心がさらに近づいていくようだった。
「尚紀さん……」
「咲。……君は、世界でいちばん、綺麗だよ」
そんな直球の言葉に、咲の頬はますます赤くなる。
「……もう、そういうこと言わないで」
「言うよ。今夜だけじゃない、これから毎晩、言うつもり」
「……ばか」
それでも、咲の声には笑みがあった。
ふたりは、ベッドに身体を預けるように並んで横たわった。
尚紀は、咲の指先をひとつひとつ撫でながら囁く。
「咲、いい?」
「うん……お願い、尚紀さん」
その声は震えていたけれど、拒む色はなかった。
時間は、ゆっくりと流れていった。
深く、静かに、心と心を重ね合うように。
体温が重なり、言葉では伝えきれなかった想いが、互いに染み込んでいくようだった。
熱を持った肌が触れ合うたび、ふたりは何度も目を合わせた。
その瞳の奥にある、確かな信頼と、永遠を誓うような想いを。
「……好き。尚紀さんの全部が、好き」
「俺も……咲がすべてだよ」
彼が咲の名前を呼ぶたびに、咲の胸の奥がふるえる。
それはもう、恋ではなく、確かな“愛”だった。
夜が明ける頃。
ベッドの中で、尚紀は咲の肩を抱いたまま、頬を寄せていた。
「……眠れない?」
「ううん。安心しすぎて、ふわふわしてるだけ」
咲が微笑むと、尚紀もまた優しく笑った。
「ねえ、咲」
「なに?」
「これからは、何があっても、こうやって君を抱いて寝たい」
「……うん。私も、あなたの隣がいちばん落ち着く」
尚紀は、そっと彼女の額にキスを落とした。
「今日から、やっと“本物の夫婦”になれた気がする」
咲も静かに頷いた。
(たくさんの遠回りをしてきたけれど——)
(この場所に辿り着けたことが、何よりの幸せ)
新しい朝が、ふたりの上に差し込んでいた。
もう、迷わなくていい。
もう、すれ違わなくていい。
この愛を、確かに手に入れた夜だった。



