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次の日から、慌ただしく毎日が過ぎていった。
あたしの仕事は、空蝉さんがまとめてくれたゴミ袋を持って、彼の実家とゴミ捨て場を往復することだった。
そして平日になると、空蝉さんは難しい手続きか何かで、何度か役場に足を運ぶようになった。そういうときのあたしは、空蝉さんがあえて残してくれた、触っても大丈夫そうな遺品をひたすらゴミ袋に入れて、またもそれをゴミ捨て場に持って行った。
夜は民宿で質素なごはんを作り、それを食べて、疲れた身体を癒すようにして、眠る。
彼があたしに触れることも、あたしが彼に触れることもなかった。だけど、そうやって過ごしていくうちに、何かが満たされていくような心地がした。
そんな毎日を過ごすうちに、最初はゴミ屋敷同然だった家の有り様は、日が経つごとに徐々にモノが減って、家屋に染みついたいやな匂いも、すこしずつマシになっていく。
ここに来て一週間とすこしが経った頃には、あらかたの作業を終え、家の中はきれいになった。
「ふたりでやったから、早かったですね。あとは、何もないですか?」
「あした、廃品回収で家具を引き取ってもらうから、そうしたらおわり」
「あとの数日は?」
「ね。暇になったね」
無意味に散歩でもしてみる? と空蝉さんが言う。散歩なんて柄じゃないよなあと思いながらも、拒否する理由はないので頷いた。
そして次の日。当初の予定通り、廃品回収の人(というのは名目で、実際は役所の人だった)に、空蝉さんのご実家にあった家具を全て引き渡して、部屋の片付けは完了した。
残りの手続きは向こうに帰ってからでも良いらしい。この土地でやらなければならないことは、すべて終えてしまったのだそう。
とはいえ、ふたりともきっかり2週間はここに滞在するつもりだったので、あたしたちは突然やってきた空白の時間を手持ち無沙汰に消費するようになった。
そのうち最初の1日は、これまでの疲れを癒すかのように、一日中民宿の涼しい部屋で眠った。そしてその次の日から、暇を持て余したあたしたちは、近所を適当に散歩するようになった。


