「半分って、どういうこと」
空蝉さんはあたしの呼吸が整うのを待たずに、自分の聞きたいことだけを聞いてくる。彼はきっと、わざと自己中心的な振る舞いをしているのだ。すこしでもあたしに嫌われるために。
息が切れ切れになりながらも、空蝉さんを睨みつける。
「空蝉さんの、くるしみ、とか、嫌なこと、半分、背負わせてください。もし借金があれば半分背負うし、だれかを、殺したくなったら、共犯にして……!」
「……あのさ、自分が何言ってるかわかってんの?」
「わかって、ますから!!」
「ばかじゃないの」
空蝉さんはしゃがんで、あたしに視線を合わせた。瞳の奥にみえる虹彩が、宝石みたいできれいだな、と思った。
「あなたを殺そうとした人に対して、言っていい言葉じゃないでしょ。本気でおれが半分背負わせたら、どうするつもり?」
「半分背負うから一緒に生きましょうよ。それに、あたしは空蝉さんがここから落とさないって信じてた」
「は、なんで」
「あたしと空蝉さんとで取り決めた、ゲームのルール。夢見麗を絶望させたら空蝉真の勝ち。だけど、身体的な欠損や生命の危険を伴ってはいけない、って決めたじゃないですか。空蝉さんは、そんなくだらないルール違反をする人じゃないって、わかってますから」
「アホくさ。もういいや。はやく立ちなよ、お姫様」
ぐ、と腕を掴まれる。
「ねえ。おれって、まだ王子様なの?」
「ずっと、あたしの王子様です」
「たまにはさ、勝手に王子様扱いされるおれの身にもなってよ」


