お風呂から上がると嵐先輩がテレビを見ながら棒アイスを食べていたので、おもむろに近づいて「それ美味しいんですか?」と尋ねる。
彼にすっぴんを晒すことに躊躇がなくなったのはいつからだったっけ。
「同じの冷凍庫にあるけど、食べる?」
「太るからいらない、です」
「たった50gのアイス食べたって変わらないでしょ? 細かいこと気にするんだね」
「アイスのグラム数を気にして把握してる嵐先輩のほうがよっぽど細かいですよ。それ50gなんですね」
ふあ、とあくびをして、遠慮なくベッドに入り、丸まっていた薄手のブランケットを手繰り寄せる。
「アイスって賞味期限ないって知ってました?」
「それさ、小耳に挟むけどほんとなの? ちなみに麗ちゃんは10年前のアイス、安全ですよって言われても食べられる?」
「えー、ギリギリ嫌かも」
「ね。抵抗あるよね」
最後の一口を食べた嵐先輩はそのまま棒切れを捨て、そのまま歯を磨きはじめる。先輩を見ながら、キッチンで歯磨きをするずぼらさが、自分だけのものじゃないと思うと安心した。
安全性に問題のない10年前のアイスを食べることに抵抗があっても、キッチンで歯磨きすることに抵抗がないあたしたち。
空蝉さんはこういう矛盾を嫌いそうだな、と思った。
「寝ようか。麗ちゃん明日は?」
「3限からなので、午前中に一旦帰ります」
「そ。早めに寝なきゃね」
嵐先輩は当然のように同じベッドに上がってきた。あたしはさも当然のように、先輩の分のスペースを空ける。


