「嫌いになった?」と空蝉さんが訊くので、ティッシュで口を拭いながら首を横に振った。
彼はため息をついて、未だ床に座り込んだままのあたしを見つめる。彼の陰部はだらしなく萎びていた。
「正直、おれにはその運命とやらがただの言い訳にしか聞こえないんだよ。それってただ、一目惚れを可愛らしく言い換えただけじゃないの?」
「空蝉さんを好きになったのは、一目惚れじゃないです。現に空蝉さんとホテル前でお互いの恋人を待っていたときまで、あたしはきちんと元彼のことが好きだったんですから」
「じゃあそれは乗り換えの正当化だ。運命がやってきたって言い訳して、新しい恋に走ったんだろう? 麗は恋をしている自分に酔ってるだけ」
「もしそうだとしても、恋に酔うことのなにがいけないんですか?」
「……迷惑だから」
空蝉さんはあたしの左腕を掴んでその場に立たせる。ベッドのふちに座ったままの空蝉さんの顔の目の前に、あたしの剥き出しになった体躯が晒されて、一歩だけ退いた。
彼は人差し指であたしの身体に触れる。おへそに指をあて、まっすぐ下に伸びる。そのまま毛で覆われた先に一点目標を見つけると、それを爪の先でくすぐった。
ぴり、と腰をそらしたくなるような刺激が走る。あたしはそこを自分で触ったことがない。へんな感じがする。
「たまには触ってほしいとか、思うの?」
「……いや、べつに」
「やっぱり、うそつきじゃん」
彼の細い指はそれよりも下に進む。ぬるり、彼の指先が分泌物のぬめりを纏ったとき、空蝉さんは心底呆れたような顔をしていた。
「変態」
「……」
「なんか、めちゃくちゃに壊したい気分。ベッド上がっておいで」
期待は不安を伴って、結局どっちつかずの感情のまま言われた通りにベッドに上がる。
彼は仰向けに横になるあたしの上に跨って、その手をまっすぐ、あたしの首に伸ばした。


