乙女解剖学



 運命とか、そんな大層なものを信じているくせに、ただ純粋なままでいられないあたしを誰か罰してほしい。

 童話の中のお姫様は、いったいどうやって、王子様と結ばれるまでの孤独感を癒していたというのだろう。

 あたしにはそれがわからない。わからないから、揺れ動く精神の支柱をどこかに預ける、「安全基地」が必要なのだ。

 ……嵐先輩を利用しているのは、あたしだ。



「……善処します」

「ん。お客さん来たよ」



 善処も何も、あたしの行動に善など一つもない。

 だが言い訳をするのであれば、あたしは空蝉さんとも付き合っていないし、嵐先輩とも付き合っていない。それにふたりと、身体を重ねているわけじゃない。

 つまり、あたしは坂本くんや、空蝉さんの元恋人がしたような、野蛮で動物的な行為には及んでいない。だから、善ではなくとも、悪でもないはずだ。まあ、多少は不埒な行為をしていることは否定できないけれど。


 王子様と結ばれる夢を追う。

 空蝉さんを追いかけることと、空蝉さんを好きでいることが生きがいとなりつつあるこの生活は、甘くもあり苦くもあって、気がついたら崖の一歩手前まで追い詰められているような心地になる。


 そんな悲しみを誤魔化すのに都合がよかったのが、嵐先輩だった。

 たまに寂しさを埋めてくれる嵐先輩の存在は、凍てついた孤独には丁度よい温度であたしを抱きしめてくれる。


 では、なぜあたしと空蝉さんの関係が凍てついているのか。その理由には色々なものがあるけれど、ひとことで言ってしまえば、「空蝉さんがあたしを嫌っているから」だろう。


 表向き、とくにさっきみたいな人目のあるところでは優しいけれど、心の底で空蝉さんはあたしのことを見下している。

 それは言葉の端々からも読み取れるし、呆れたような表情からも読み取れる。

 だけど空蝉さんはあたしを誘う。それは、運命に溺れたあたしをより深く沈めるためだということは、ここ最近になってから気付いたことだ。