「さっきの人、知り合い?」
空蝉さんがいなくなった店内をぼうっと眺めていると、嵐先輩からそんな疑問が降ってきた。そういえば、先輩がいるときに空蝉さんが来たのははじめてだったかもしれない。
「……友達?」
「どうして麗ちゃんが疑問形なの」
「友達と言っていいのか、知り合いと言っていいのか、微妙なラインってありますよね」
「もしかして人付き合い苦手?」
否定できないので頷いておく。
昔からグループで行動するのが苦手だった。友達がいないわけではないけれど、気の合う友人と、一対一の関係をじっくりと形成するほうが性に合っている。
だから、特に3人以上のグループで会話をするのが好きじゃない。どこを向いて喋ればよいかわからなくなる。これは人見知りの一形態だろう。
あたしが運命的な恋を待っているのは、閉鎖的な関係のなかに閉じこもりたいからだ。
恋愛って、一番閉鎖的で、排他的な関係だから、ふたりがいれば他には何もいらない。それってすごく素敵なことだし、なにより楽だ。
……まあ、その関係値に漕ぎ着くことが、なによりも大変なのだけれど。
「今から彼と会うの?」
「……はい」
嵐先輩はこちらに一歩近づいてくる。
まるで内緒話をする小学生みたいに、すこしいじわるそうな顔をして、結いあげたポニーテールの後れ毛を愛おしそうにすくいあげた。
「友達だったら、ちゃんと健全に解散するよね?」
「……」
「今日も家で待ってるから」


