「それで結局私がやることになったんだけど、問題があってさ」
どうしてだろう
最初は疑問しかなかったこの光景
私の隣でずっと喋っている篠崎 帆夏ちゃん
最近は1人で歩いていると話しかけてくれて、肩を並べて学校に行くことが増えた
「帆夏ー!遅いよ〜?」
私を不思議そうに見ながら、前で大きく手を振る
他の友達と約束があったなら申し訳ない
帆夏ちゃんの目線に入るように手を降る
…が、その手を拒否られ帆夏ちゃんは大声で言った
「ごめーん!!今日は紫帆と行くから先行ってて!!」
帆夏ちゃんの友達は呆れたように、でもどこか愛があるような微笑みで軽く手を挙げた
良い友達なんだと、初対面なのにわかった気がした
「クラス、一緒だったら良かったね」
少し残念そうに笑う帆夏ちゃんだけど、私はそう言ってくれるだけですごく嬉しかった
「あ、帆夏ちゃん」
目の前で自転車が止まり、こちらを見下ろしていたのは同じクラスの如月遥陽くんだった
「望月さんも一緒なんだ、おはよう」
軽く会釈すれば如月くんは笑いながら言う
「堅いって」
私が思っていたより、この学校暖かいのかもしれない
自転車から降りた如月くんがスマホの画面を私と帆夏ちゃんにみせる
「海凪のやつ?凄いニュースになってたけど」
そこには昨日のラジオで言っていた“言葉の種類”について書かれていた
「海凪って意外と頭柔らかいからな」
嫌味なのかも分からないことを呟いた如月くんの視線が、私に向いていることに気づいた
「あの相談、望月さん?」
からかいの目を向けていた如月くんの頭を帆夏ちゃんが叩いた
「って…冗談だって」
如月くんはそう言ったあとスっと真面目な表情で言った
「でも喋らないといけない、なんて決まりはないし」
「むしろそっちの方が望月さんらしいよ」
その言葉に私は驚いた
木葉くんのような有名人じゃなくても、日常的にそう思ってくれる人がいるんだって
でもどこか、信じられない気持ちもあって
私はその場でお礼を伝えることしか出来なかった

