「えー、それでは転校生の紹介です」

教頭の言葉にザワザワと雑音が走る

「え、可愛くね」
「やった、女子だ」
「スタイル良すぎ」

そんな言葉があちこちで飛び交う中、一人の女子生徒が前に立つ

「なにあれ」
「スケッチブック?」
「障害者じゃね」

いつもと違う歓声に、寝ていた凪海は顔を上げる

「静かに!!えー、望月 紫帆(もちづき しほ)さんは諸事情で声が出ません。みんなが明るくむかえて、日々の生活を手伝ってあげてください。」

大人はズルい

誰もが気になる疑問を諸事情で片付けた

一例した望月は静かに立ち去っていく

「どんな諸事情だよ…」

ボソリと呟いた凪海はその後の担任発表等聞く耳も持たなかった「さっきも話会ったと思うけど、今年度A組の担任を務める宮林だ。よろしくな」

保健体育科の教師、宮林は周りの生徒からの信頼が厚く好かれている

「で、同じくさっき紹介があった望月はこのクラスに入ることになった」

ザワザワとするこの音が凪海のとっての苦痛だ

「望月はそうだな…1番後ろの、木葉の隣」

1番後ろの一番端、そこが木葉 凪海(このは なぎ)の席だった

そして空白だったその席に無口の転校生が腰を下ろす

「よーし、これでこのクラスも30人になったな。2年は受験の準備期間だ、決して無駄にならないように!以上!」

午前だけの授業が終わり、凪海は如月に話しかけた

「遥陽、俺」

そこまで言ったときだった

「凪海くん!連絡先交換しよっ」

こんな少女漫画のようなことがあるのか、と如月は苦笑する

「あ、ずるい!私もー!」

無口の転校生なんて目もくれず、周りは凪海に夢中だ

「凪海くん聞いてるの?」

凪海は真顔で言う

「悪いけど俺、用事あるから」

その冷たさに周りは目をハートにする

「凪海くーん!!」

女というのはここまで執拗いものなのか

凪海は黄色い歓声を無視し、教室を出た