脇役だって、恋すれば

 大手ではあるけれど学力はそこまで関係ない今の会社に就職したものだから、両親はがっかりしただろう。それでも私は、姉は関係なく、自分の努力を認めてほしかった。

 両親に悪気がなかったのも、私を愛してくれているのも理解しているつもりだ。ただ、相手がなにげなく口にした言葉が、こちらには色濃い痣を残すことがある。今でも気にしてしまうくらいに。

 心に閉じ込めていたものが溢れるのを止められなくて、瞳にじわっと熱いものが込み上げる。

「仕事でも、お姉ちゃんがいることで自分の頑張りを認めてもらえなかったらって考えちゃう。こんな自分……ほんとうんざりだよ」
「香瑚……」

 ひた隠しにしていた鬱憤をぶちまけてしまった。初めて私の気持ちを聞いたであろう姉の目にも涙が浮かぶ。彼女にはどうしようもできないことだから、余計にショックだろう。

「こんなこと、お姉ちゃんに言ったってしょうがないのにね。せっかくこんなに素敵なもの持ってきてくれたのに……本当にごめん。今日はもう帰って」

 濡れたまつ毛を指で拭って立ち上がり、「仕事はちゃんとやるから安心して」と覇気のない声で告げた。