脇役だって、恋すれば

 申し訳なさそうに眉尻を下げる彼女を見て、私は膝の上に置いた手をぐっと握る。

 違う、謝ってほしいわけじゃない。姉は悪くないのだし。でも……彼女が芸能界にさえ入らなければ、私の人生ももっと違っていたんじゃないかと思ってしまうのも正直なところ。

 そんなことを言ってもどうにもならないので、ささくれ立ちそうな気持ちを宥めて首を横に振る。

「お姉ちゃんが謝ることないよ。なにも悪くないんだから」

 そう思っているのは本当だ。宥めるように言うと、切なげにしていた姉の表情に力強さが増していく。

「私と仕事することで、もしまたなにか嫌なことがあるかもって心配してるなら、大丈夫だからね。香瑚の味方はたくさんいるんだから。もちろん私もそうだし、青羽くんも」

 青羽の名前を出され、急激に胸が苦しくなる。励ましてくれているのだろうが、姉と彼との距離の近さを思い出して再び嫉妬が渦巻いてしまう。

 それに私は、昔のように周りになにか言われるのを恐れているわけではない。姉を避けているのは、彼女と一緒にいるとどうしても劣等感を抱いてしまうから。私自身の問題なのだ。

 しかし、そんなことを知る由もない姉は、私の手を温かな両手で包み込んでくる。