脇役だって、恋すれば

 姉の厚意にちょっぴり胸がじんとする。おおらかすぎて困るところもあるけれど、その温かい心をどんな相手にも向けられる人なのだ。

 「ありがとう」と心からの感謝を伝えて受け取ると、ほっとしたように姉の唇が弧を描いた。

「新作発表会、グランウィッシュと直接関わるわけじゃなくても嬉しい。香瑚たちが作る会場とか、演出とか、しっかり見ておくからね。……香瑚は乗り気じゃないかもしれないけど」

 つけ加えられたひと言に反応してぱっと顔を上げると、彼女は寂しそうに微笑む。

「香瑚、ずっと私のこと避けてるでしょ。わかってたよ」

 ああ、やっぱり気づいていたんだ。こうやってはっきり言われたのは初めてで、私は少し動揺しつつもまつ毛を伏せて正直に謝る。

「……ごめん」
「いいの。きっと、私が芸能活動をしてるのが関係してるのよね?」
「そこまで知ってたの?」
「うーん、香瑚がよそよそしくなったのは高校くらいからだし、私が忙しくなってきた時期と被るからそうなのかなって」

 その推理は大正解だ。彼女は空気が読めないようでいて、意外と鋭いところがある。

「芸能人が家族ってなると制限も多いし、香瑚にもたくさん迷惑かけたよね。謝るのは私のほう。今さらだけど、本当にごめんね」