脇役だって、恋すれば

 そんな彼女と一緒に部屋へ向かおうとする私に、「また連絡する」という切実そうな声が投げかけられた。

 部屋に入り、すぐさま休みたくなる気持ちをぐっと堪えて姉の飲み物を用意しようとするも、彼女は「長居しないから」と遠慮した。そしてリビングのクッションに座ると、さっそくバッグからなにかを取り出す。

「香瑚にこれを見せたかったの。結構いい感じにできたのよ」

 るんるんとした調子でテーブルの上に広げたのは、海外の写真がいくつも貼られたスクラップブックだった。おしゃれなフライヤーも貼られていて、マスキングテープで可愛くデコレーションされている。

 隣に座った私は、目を輝かせ食い入るようにそれを見て、感嘆の声をあげる。

「うわぁ、すごい……! お姉ちゃんが作ったの!?」
「そう。行くたびに写真撮って、飛行機の中とかでちまちま作ってた。いい気分転換になるのよね~」

 得意げにする姉だけれど、写真の撮り方もコラージュの仕方も本当にセンスがある。ページをめくるたびにわくわくして、世界にはこんなに綺麗な場所がいくつもあるのだと教えられる。

「めちゃくちゃ素敵! これ、お金取れるよ」
「ふふっ。香瑚にはタダであげちゃいます」
「いいの?」
「だって、そのために作ったんだもん。海外に憧れがあるって言ってたでしょ? リアルな写真を見せてあげたくて」