脇役だって、恋すれば

 新涼くんは周囲を見回して「結構いるなぁ」と呟き、ゆっくり話し出す。

「ロールプレイングゲームでは、モブであるたくさんの村人や商人に話しかけて情報を集めていきますよね。でも、ほんのひと言しか話さない彼らにも物語はあるはずなんです。例えば、幼い頃に魔物が襲ってきて故郷をめちゃくちゃにされてしまい、苦労しながらも明るく生きてきた、とか。この設定だけで主人公になれると思いませんか?」

 確かに、さらっと流されてしまうキャラでも、深掘りすると面白いかもしれない。

 サイドストーリーが書けそうな生い立ちの脇役もいるもんなと共感していると、周りの人たちも同様に小さく頷いている。

 そういう存在がいると、物語のひとつの味になって深みが増す。モブキャラをあまり多く作らない代わりに、ひとりひとりにしっかり設定を与えることが個人的にこだわっているところだと、新涼くんは言った。

 皆が真剣に聞き入っていて、メモを取る人も多い。ゲームとは関係のない仕事をしている私ですら、勉強になるなと思いながら聞いていた。