脇役だって、恋すれば

「私が気疲れするってわかってたの? 大正解だったね」
「いや、そういうことじゃ……まあいいや」

 なにか言葉を飲み込んだので頭にハテナマークを浮かべるも、とりあえず私を突き放したわけではなかったらしい。

 胸のつかえがひとつ取れてほっとする私に、彼は口元を緩めて告げる。

「力になってくれてありがとな。でも、もう社長とデートするのはやめろ」

 最後は真剣に言われ、それに後押しされたような感じで「うん」と頷いた。

 もし誘われても、やっぱり断ろう。デートが仕事のためじゃなくなったなら、好きな人以外とする必要はないもの。


 それからも少しゲームの話をして、ビールをひと缶空けたところで店を出た。ゆっくりゆっくり飲んでいたのに、あっという間に時間が経ってしまった。

 いつも飲むビールより度数が高かったせいか、ふわふわして心地よい。青羽がマンションまで送ってくれるというので、それに甘えてまたゆっくり夜道を歩く。

「ほろ酔いで夜の町を散歩するのって、なんでこんなに気持ちいいんだろ~」
「酔っ払ってるとなぜか長距離でも平気で歩けるよな」
「そう! あれ、なんでだろうね」

 たわいない話で笑い合い、空を見上げる。ここからではあまり星は見えず、プラネタリウムみたいなロマンチックさはないけれど、とっても楽しい。