脇役だって、恋すれば

「まあ、大事なのは一緒にいて心から幸せを感じるかどうかじゃない? 格差があってもなくても、そこは皆同じだよ。きっと」

 あっけらかんと笑って言うと、青羽の表情もどこか安堵したようにほころんだ。

 でも、結局たいしたアドバイスにはなっていない気がして、ぽりぽりと頭を掻いて苦笑する。

「ごめん。こんなんじゃシナリオの参考にならないよね」
「いや、そんなことない。……むしろ、今ひらめいたかも」
「ほんと?」

 顎に片手を当てる彼の瞳が少し輝いたように見え、私は嬉しくなって「やった! かんぱーい」と缶を持ち上げた。彼も長い指で缶を持ち、再び乾杯して笑い合う。

「よかった、青羽のためになって。私の今日一日が報われた気分」
「やっぱり全部俺のためだったんだろ」

 したり顔で言われ、私は「あ」と声を漏らした。そういえば食事会の時、ツンとして『別に青羽のためだけじゃないから』なんて言ったんだった。

 なにも望まれていないみたいでちょっと寂しかったのよね、と思い出して苦笑すると、青羽はどこか罰が悪そうにまつ毛を伏せる。

「この間、言い方きつくて悪かった。香瑚に協力してほしくなかったわけじゃなくて、疑似デートなんてさせたくなかっただけなんだ」

 彼の意外な本心を聞き、私は目をしばたたかせる。