脇役だって、恋すれば

 二十六歳にもなって、これだけのことでドキドキしている自分が恥ずかしい。悶えたくなるも、新涼くん……いや、青羽が「ごめん。続けて」と促すので、なんとか気持ちを落ち着かせる。

 ビールをひと口呷って息を吐き、思考を切り替えてデートの内容を思い返す。自由が丘でショッピングして、プラネタリウムを見に行ってディナークルーズをしてきたと話すと、青羽は据わった目で苦笑いした。

「本気出してんな、あの人……。胸焼けしそう」
「私がここに来たい理由がわかったでしょ」
「よくわかった。でも、女子ってそういうのが好きなんじゃないの?」

 ナッツをぽいっと口に運ぶ彼に言われ、目線を宙にさ迷わせてさっきも考えていたことを頭の中でまとめる。

「たぶん、村娘だったら嬉しいと思う。お姫様に憧れもあるだろうし。でも最初は、自分なんて釣り合わない!って引いちゃうんじゃないかな」

 今日の自分と、想像の村娘とを重ね合わせてみると、似た部分は多い。ただ決定的に違うのは、村娘には他に想いを寄せる相手がいないということ。

「王子様が変わらずに愛を伝え続けてくれれば、村娘もだんだんそばにいたいって気持ちが強くなっていくと思うよ」