脇役だって、恋すれば

 リカーショップには初めて見るお酒がたくさんあり、いくつか可愛いラベルのものをジャケ買いした。新涼くんのおすすめを教えてもらうのも、彼の好みが少し知れて嬉しい。

 店内のバルスペースは立ち飲み風になっていて、小さな丸いテーブルで数人のお客さんが静かに嗜んでいた。仕事帰りに気軽に立ち寄れる感じが最高だな、とほくほくする。

 お酒と一緒に買ったおつまみを並べ、グラスのいい音ではなく、缶と缶がぶつかる少々まぬけな音を立てて乾杯した。

 私が選んだベルギーのクラフトビールは、香りがよくほどよい甘みもあってとても美味しい。さっきは緊張と遠慮でワインを少ししか飲めなかったから、そういう意味ではようやく満足できそうだ。

「で、どうだった? 社長とのデートは」

 ビールを堪能していると、新涼くんのほうから本題を切り出され、缶に口をつけたままどきりとする。

 いけないいけない、本来の目的を忘れそうになっていた。コン、とテーブルに缶を置き、今日一日を振り返って率直な感想を伝える。

「予想以上に高級感たっぷりですごかったよ。慶吾さんはずっと紳士的で、言動がとにかく甘くて、本当にお姫様気分を味わわせてもらった感じ」
「慶吾さん、ねぇ……。俺の名前は?」

 いつの間にか笑顔が消えている彼に突然そう問われ、私はキョトンとする。