脇役だって、恋すれば

「酒屋?」
「そう。中に飲める場所があるから、缶ビールでも買って飲んでいかない?」

 わくわくしながら、今の気分にぴったりの飲み方を提案してみた。しかし、新涼くんはちょっぴり不満そう。

「俺にもカッコつけさせろよ。社長が連れていくような高級店じゃないけど、一応いいとこ知ってるんだから」

 張り合う子供みたいに口を尖らせるので、可愛くてきゅんとしてしまった。メンツを潰すことになって申し訳ないのだが、今はもう遠慮したくなくて「ごめん」と苦笑する。

「今日はなんか気疲れしちゃって。本当はコンビニでお酒買って公園で気楽に飲むのが一番なんだけど、最近取締り厳しいしさ」
「オッサンかよ」

 即座にツッコミが飛んできて、私は声を出して笑った。そうなのよ、オジサンみたいな生活が好きなのよ。

 新涼くんも気が抜けたように笑い、穏やかな目をして頷く。

「じゃ、そうしよう。バーは次回な」

 次があるんだ……。慶吾さんとの〝次〟はためらってしまうのに、今は嬉しさしかない。喜びを隠せない笑顔で「うん」と頷き、一緒にゆっくり歩き出した。