脇役だって、恋すれば

 恋愛漫画にありがちなヒーロー像を勝手に作っていると、彼はひとり言のように言う。

「青羽も肝心なところで遠慮するんだよな。普段あれこれ突っかかってくるくせに」

 新涼くんの名前が出され、どきりとした。慶吾さんとのことでいっぱいいっぱいだったのに、一気に彼が私の頭の中を占領していく。

 〝肝心なところ〟ってどういうところなんだろう、とぼんやり思いつつ「そうなんですか」と相づちを打つと、慶吾さんはふっと苦笑する。

「あ……いや、忘れてくれ。今、他の男のことは考えさせたくない」

 またしても漫画の胸きゅんセリフのようなひと言が飛び出し、リアルにヒロイン気分を味わう。これもメモしておきたい……。

「プレゼントはまだ序の口だよ。『極上の体験をさせてあげる』って言っただろう」

 得意げに口角を上げる彼に、私は呆気に取られる。いったいこの後はなにをするのか、あれこれ予想しながら再び車に乗り込んだ。


 すでにお腹いっぱいになり始めている私を連れて、彼が向かったのはプラネタリウム。子供の頃以来行っていない私にその選択肢はなかったので、とても新鮮だった。

 しかも、最近のプラネタリウムにはカップルシートなるものがあり、ふたりでふわふわのシートに寝転んで見られるようになっている。