脇役だって、恋すれば

 写真映えする可愛いカフェで軽くランチをしてから、散歩がてら街並みを楽しんで気ままに雑貨屋やブティックに入ってみる。

 そのショップはどこもお値段高めで、基本プチプラしか選ばない私にとっては少々ハードルが高い。が、慶吾さんがいることで強気で入れるのは嬉しいポイントだ。

 とあるセレクトショップでなんとなくアクセサリーを眺めていると、隣から慶吾さんも覗き込み、花モチーフのネックレスを指差す。

「これとか、香瑚ちゃんに似合いそうだ」
「あ、可愛い……! 好きです、こういうデザイン」

 上品で控えめなそれは私の好みにも合っていて、なにげなくそう口にした。すると、慶吾さんは近くにいたスタッフに「試着させてもらえますか?」と声をかけた。

 疑似デートではここまで実際にするのか、なんて思いながらネックレスをつけてみる。首元を品よく華やかにしてくれるそれを見て、慶吾さんは満足げに頷く。

「うん、よく似合ってる。気に入った?」
「はい。とっても」
「じゃあ、このままつけて帰ります。お会計を」

 彼がスタッフにさらりと告げるので、私は数回まばたきをしてから「えっ!?」とすっとんきょうな声をあげた。

 ただ試着するだけだと思っていたのに、まさか購入するの!? スタッフはもう準備を進めているし。